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まちづくり・観光
2021.11.09

開かれたお寺から地域に貢献する

新発田市
長徳寺 住職
関根 正隆さん
1585年(天正13)年に創建され、赤穂四十七士の1人堀部安兵衛ゆかりのお寺である長徳寺。お寺では意外なイベントで地域の活性化に取り組む住職 関根正隆さんに想いを伺った。
■町があっての寺である
 お寺でイベントをはじめたきっかけは、知り合いからジャズピアニストのライブを新発田で開きたいと相談され、長徳寺で場所を提供したのが始まりだそうだ。その後、パン屋・鍼灸師・雑貨店がコラボし、あったまるをテーマにした「温々(ぬくぬく)」、生産者の方がお米を持ちよりお米の食べ比べをする「めし会」、本堂でヨガをする「寺ヨガ@長徳寺」など、お寺らしからぬイベントを次々と開催している。その根底にあるのは、「町が衰退してしまってはお寺も必要とされない。町があっての寺である」との考えだ。
 新発田市寺町界隈で開催した「しばた 寺・美楽喜(びらき)」も普段お寺に来ない若い人たちに足を運んでほしいと始めたものだ。企画の参考とした三条別院(三条市)では、300畳位ある本堂内に約60店舗が出店して行なわれているが、お寺の規模が違うため、新発田では宗派を超えた11のお寺が連携し、お寺ごとに趣向をかえて実施している。長徳寺では曹洞宗永平寺の料理長をしていた方を招き「テラメシ-精進料理食堂-」などを開催した。寺びらきには2日間で2000人が集まるという。(現在はコロナ禍のため中止)
 「地域の方に必要とされ、利用してもらうのは大歓迎!自分が主導で動くと周りが見えなくなってしまうので後方支援に徹するのが継続してうえで大切なこと」と関根さん。市民団体「フードバンクしばた」が主催する「おてら子ども食堂」も、運営委員に入ってはいるが場所の提供のみである。また、寺びらきのメンバーである11寺院は、フードバンクしばたと協力し、新発田市内の経済的に困難な状況にあるご家庭へお供え物をお裾分けする「お寺おやつプロジェクト」を行っている。
 様々な活動をアピールしてみなさんからの協力を得て、色々な人に「お寺を利用して良かった」と思ってもらい、そして次につながる。寺びらきに訪れた人からもイベントを行う申込みがあるそうだ。
■めざすは仙台の牛タン!?
 例年1月下旬から2月に開催される「しばたオイスターバー」は新発田市出身の赤穂浪士の堀部安兵衛が縁で、兵庫県赤穂市産の牡蠣を使ったオリジナル料理を堪能できるイベントとして、平成26年より続いている。「安兵衛との関係を先に出すのではなく、まずは牡蠣の美味しさを味わっていただき、徐々に実は…と牡蠣と安兵衛の関係をあきらかに!そうすれば安兵衛も大事にされる日がくるのでは?と三段論法です」と関根さんは笑う。
 オイスターバーの参加店舗は開始時の8店から20店程に増えて、すっかり名物イベントとして定着した。再来年には十周年を迎える。
 飲食店からも継続の要望が多く、さらに発展させる為に新発田市外も巻き込んで大きくする事が課題となっている。
 「今後、新発田市内に限らず近隣地域にも知名度が広がれば、仙台における牛タンのように、新発田に牡蠣が根付き、新発田の地域経済が盛り上がるのではないか」と考えている。
■未来にむけての長徳寺のあるべき姿とは
 毎年12月14日に行われる義士祭では、四十七士が討ち入り前にそばを食べた逸話に基づいて、30年前から毎年そばを振る舞ってきた。昨年はコロナ禍のため中止したが、日清食品の許可を得てどん兵衛のカップ麺にオリジナルラベルを貼り、どん兵衛ならぬ安兵衛を配布した。
 長徳寺がここ10年で成功したのが、メディアに定期的に出ることによって「あそこのお寺はいつも何かやっている」というイメージができた事だと関根さんは語る。   
 しかし、「イベントばかりやって注目を浴び開かれたお寺でよいのか」とも考えるという。「檀家さんにとっても長徳寺がメディアに多く露出することは、『うちの墓があるのは有名なお寺』と言えるメリットがあるが、檀家さんにもっと目を向けて悩み事相談などのケアをしっかりおこない、そして仏教の教えを伝えていくのも大切なことです」と関根さんは語る。その入り口としてある程度知名度があるのは重要であるが、それだけでは仏教の教えは広まらない。お寺を運営維持させていくだけではなく、住職としてどのように次の代へ引き継いでいくのか思案するところである。
 古来、お寺は寺子屋や公民館のようなコミュケーションスペースとして、地域の中心的な役割を果たしてきた。今後はイベントだけでなく、貸し会議室や高校生の勉強室のような日常寺びらきをしたいと考えている。しかし、日常となると長期的になり、計画的な運営が必要となる。「最大の弱点はマンパワーがない!ひとりではやれる事には限りがある。ジレンマはあるがいろいろ試すことは楽しい」と関根さんは語る。これからも長徳寺からの発信が楽しみである。
長徳寺で開催されるイベント情報はこちらから

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