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まちづくり・観光
2021.03.08

旅人とムラビトの心をつなぐ架け橋になりたい

胎内市
NPO法人ヨリシロ代表理事
浮須 崇徳 さん
豊かな自然に恵まれた胎内市で、市役所の商工観光課に勤務するかたわら、NPO法人ヨリシロを立ち上げ、中山間地域の住民と一体となって地域を盛り上げる活動に取り組んでいる浮須崇徳さんに思いを伺った。
草の根の社会活動に触れた転機
浮須さんは中条町(現在の胎内市)に生まれ、関東の大学を卒業後の2004年、地元である中条町に入庁した。入庁後はおもに事務系の仕事を担当した。2012年に新潟県庁へ出向となり、新潟県県民生活課社会活動推進係に配属される。これが浮須さんのキャリアにおける大きな転換期となった。

中間支援組織との基金づくりやNPO法人との協働を行うなかで、市民活動と関わりを持つようになった。県内各地へ出張で飛び回わり、社会活動に携わる人々と関わりをもつ中で、ステークホルダーが活動に参加していることの重要性を感じた。住民が当事者意識を高めつつ、取り組みの担い手として施策に参画することの大切さを強く感じた出向期間だった。

2年間の県庁への出向を終えて胎内市役所へ戻り、市民協働を担当することになった浮須さん。胎内市は地縁型組織が多く、NPOだけでなく自治会などとの協働も多かった。集落点検などを行い、村のビジョンづくりも行うようになる。計画を作ったら、今度はそれを実行したいという思いも出てくる。

「どうやったら、せっかくみんながやる気になっているものを具体化できるか。」

その想いから、浮須さんが主導して胎内市に地域おこし協力隊事業の導入を進め、2016年には市内初の地域おこし協力隊が着任した。
行政の手の届かない部分を支援したい
2018年には「NPO法人ヨリシロ」を設立。きっかけは、地域おこし協力隊の活動に関わったときのことだった。

大学生を地域に1ヶ月間滞在させる事業を行い、ある大学生が自らの課題達成のために、90歳のお年寄りのところに日曜大工を習いに通いつめた。そのお年寄りが、その後も大学生と交流したいとLINEをはじめたり、大学生が再び村を訪れたりと、村の人と若者の触れ合いが生まれる。この交流を通して、地域の人が活力を得ていきいきとしている姿を目の当たりにした。
「これはお金では変えられないもの。なにか変革を起こすにも、暮らしている人がいきいきと暮らしていることが大切で、こうした交流は行政ではなかなか取り組めない。」と感じた。
そして、協力隊の任期が終了した後も、地域と共に築き上げてきた信頼関係を保ちながら、引き続き活動しやすくなるような『ハコ』があるといいと思うようになり、ヨリシロの立ち上げを決意した。

ヨリシロの取り組みは大きく分けて二つある。ひとつは地域おこし協力隊の支援事業。
地域おこし協力隊の支援は、行政側にとって難しいことが多い。協力隊の受け入れに関しては、市町村によって差が激しく、担当者が異動で変わると、ノウハウや地域とのつながりが引き継がれにくい。その部分を協力隊のOB・OGがサポートすることで、集落のヒアリングや集落点検などを行え、結果的には、行政職員の負担も減ることになる。

もうひとつは、観光による地域づくり事業だ。もともと地域おこし協力隊の主な活動エリアが、リゾートホテルなどが立地する地域であったこともあり、地域を持続可能にしていく手段として注目していた観光分野についても具体化している。
人と地域との関係には「住む、住まない」の二極ではなく、観光などによる一時滞在など様々な関わり方がある。外からきた人は、地域の魅力を褒める。地域の人々は、日常に溶け込んでいる地域の魅力が当たり前すぎて気づかないが、褒めてもらうことによって地域の魅力に気づく。これを『交流の鏡効果』という。この効果により、地域の人々の心が豊かになり、さらに懐も豊かになってもらいたいという願いがあり、そうした関わりを充実させる事業として、ヨリシロが様々な企画に取り組んでいる。
集落にある資源で集客する
ヨリシロでは、自分たちの生活環境で稼ぐことで物心ともに豊かになると考え、『MURA ASOBI』というウェブサイトも立ち上げた。観光を切り口にして、自分たちの生活に付加価値を見出そうという取り組みだ。

掲載コンテンツについては、ヨリシロが企画したプログラムや、地域の情報を提供してもらい掲載したものなどさまざまで、地域の情報ポータルサイトのような位置づけになっている。印象的なプログラムとして、さいの神まつりがある。昔から伝統的に続いている地域の行事に、地域外の方を観光客として招き入れ、地域の生活ぶりを楽しんでもらえるようなプログラムづくりを行っている。

ヨリシロが関わったプログラムとしては、2019年には、54のプログラム、定例開催の行事を含めると277回の開催日数で、延5,100人以上が参加した。2020年は178回開催、3,400人以上が参加。参加者の反応は良く、毎回足を運んでくれるリピーターもいるという。
観光分野のトレンドとして、名勝地巡りよりも地域の生活感を重視したイベントが流行っている昨今、今後もますます人気が高まると予想される。

これまでの活動の集大成ともいえるイベントが、2020年に開催した『苔とマコモと小さなお祭り』だ。限界集落の村の資源をPRする取り組みで、ヨリシロもPRの手伝いや、協力隊のブースも出した。
2018年のGWにヨリシロ が企画・コーディネートした『里山遊園地』も大好評だった。地域の行事や活動を2日間にまとめてパッケージ化して、参加者を募り、延230人が参加した。

様々な取組を経て、今は「365日を通じてどう人に来てもらうかを考えることが大事。」と浮須さんは語る。地元のホテルの収容人数の問題もあり、一度にたくさんの人を集客できないこともあるため、単発のイベント頼りにはせず、日常をより大切にしたいという思いがある。
尽きない交流が地域をつくる
ヨリシロの今後を伺うと「観光による地域づくり事業を引き続き行い、もう少しコンテンツ・企画を増やしたい。」と語る。民家をシェアハウスにして大学生のインターンを地域で一ヶ月間受け入れ、共同生活してもらう『課題解決型インターン』を検討している。課題はソリューションの生まれるきっかけにもなり、これから社会に出ていく学生たちが、課題解決のアウトプットに取り組むことの意義もある。

「一ヶ月滞在すると、地域の住民とも関係性が生まれてきて、インターン期間が終わった後も度々遊びに来てくれたり、村の人と仲良くなってくれたりする。一ヶ月という短い期間ではあるが、その後の長い年月のお付き合いにつながるので、胸が熱くなることも多く、お手伝いしていて楽しい。大変な部分は多々あるが、ぜひ今後やっていきたい。」と展望を語った。まだインターンの受け入れを経験していない集落もあるので、さらに受け入れを広める予定だ。

地元愛にあふれ、何よりも地域の皆さんのことを思って活動する浮須さんと、心惹かれる胎内市の人々との活動は、今後ますます多くの人を引きつける魅力的なものになっていくと期待がふくらむ。
MURA-ASOBIウェブサイト

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