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社会教育
2024.03.14

本と人とのつながりを生む居場所づくり

新潟市中央区
みんなの小さな図書館ひとハコBase 館長
佐藤清江さん
車が行き交う大通りに面した「みんなの小さな図書館 ひとハコBase」は、本が好きな人たちの交流の場として、本をきっかけにつながった人たちの居場所として、世代を超えた多くの人たちで賑わっている。館長の佐藤清江さんに活動への想いを伺った。
絵本の良さを多くの人に伝えたい
 保育士の勤務経験を持つ佐藤さんは、子どもたちへの絵本の読み聞かせのボランティア活動や、図書館などでの絵本講座を通して、多くの親子に絵本を読むことの素晴らしさを伝える活動を続けてきた。絵本を薦める対象は子どもだけでなく、絵本を通して自分を見つめ直す大人向けの絵本セラピー講師としても活躍している。
 「子どもはもともと本を読むのが好き。小さい時に本を読む種を植えておけば、またいつか本を読むときが来る」と話す佐藤さん。子どもの絵本離れが進んでいるといわれているが、家庭に限らず保育の現場でも、子どもの年齢に合った絵本を選び、子どもたちに愛情をこめてたくさんの絵本を読んであげてほしいと語る。
 佐藤さんには「いつか絵本しか置かない絵本の専門店をやりたい」という夢があった。起業の相談をした際に、店舗営業の現実的な難しさに直面し、「絵本を売りたいのか、読みたいのか、伝えたいのか、自分は何をしたかったのか」と、ふと立ち止まって考えた。ちょうどその頃、燕市に「みんなの図書館ぶくぶく」が開館したことを新聞で知った佐藤さんは、記事を見た翌々日にぶくぶくを訪れ、館長に会って話を聞いた。そして、「図書館なら、みんながそれぞれ持ってくるから仕入れはいらない。そこで人が繋がれる。これなら私にもできる!」と、民営図書館の開設を決意した。
本は人をつなぐ
 佐藤さんは5名の発起人とともに、2023年4月、新潟市中央区近江にひとハコBaseをオープンした。「一箱本棚オーナー制度」を導入し、本棚オーナーは月額2,000円の料金で約30cm四方の箱を本棚として自由に使える。オープン以来、順調にオーナーが増え、用意した70箱は埋まっている状態だ。本棚オーナーが厳選したおすすめの本を置いて紹介したり、名刺やチラシを置いて宣伝をしたり、活用の仕方はさまざま。手書きのポップや工夫されたレイアウトで飾られた一箱の空間は、オーナーそれぞれの個性が溢れていて、眺めているだけで楽しいと好評だ。
 本棚オーナーには特典がいくつか用意されている。まず、月に1回開催されるオーナー会議に参加できる。毎回10数人が参加し、自己紹介を兼ねながら本棚を紹介したり、ひとハコBaseの運営について話し合ったり、本が大好きなオーナー同士が交流できるので、予定の終了時間を過ぎても本の話で大いに盛り上がるそうだ。
 また、通常1時間1,000円のレンタルスペースが月に3時間まで無料で利用できる。このスペースを利用して教室や講座を開催しているオーナーも多く、英語紙芝居やアロマクラフト講座、カラーセラピー、マネー講座など、オーナーそれぞれの特技を生かしたさまざまなワークショップが開催されている。
 特典を使うか使わないかも、オーナーの自由で、アイデア次第でいろいろな活用の仕方がある。「使いたいように使ってもらう、が基本」と佐藤さんは話す。
本が好きな多くの人たちに支えられて
 「人と箱がつながり、自分の基地になる」という意味のひとハコBase。本棚のオーナー、本を借りに来る人、ワークショップに参加する人など、多くの人にとっての居場所となっている。「本を好きな人たちが、本のことを語れる場所があるってことが喜ばれている。ここは本の聖地」と佐藤さんは語る。
 本棚のメンテナンスに訪れていた、オープン当初からのオーナーであるMさんにも話を伺った。Mさんは医院の待合室で見たフリーペーパーでひとハコBaseを知り、すぐに申し込んでオーナーになったそうだ。「お金を払って自分の本を並べて、喜んで活動していることを、人にどう説明したらいいのか悩むことがある。でも、これは運営費であって、この活動に参画するということ。子どもたちも来られるし、こういう場所って大事だなと思う」と語る。本棚のメンテナンスの他、友人を連れてきたり、本を借りたり、月に2回ほど通っているそうだ。佐藤さんと本の話やこれからの活動のアイデアなどを楽しそうに話し、Mさんは帰っていった。
 「答えのない予測不可能を楽しむことに惹かれてこの活動を始めたけど、ここはいま予測不可能が多すぎて(笑)。人と人が繋がることで、趣味がお金になったり、イベントを企画するにあたって自分でチラシを作ってみたり、みんなが新しいことに挑戦している」と佐藤さんは話す。ひとハコBaseでの人の交流により生まれる様々な化学反応は、佐藤さんが想像していたものをはるかに超えているようだ。
「一度きりの人生、やりたいことをやりたい!」
 間もなく1周年を迎えるひとハコBase。新潟市内だけでなく、市外から、また県外在住の人や子どものオーナーもいるそうだ。「学校に行けていない子も本棚を持っていて、たまに来ます。大人が楽しむ姿を見て、一緒に成長してく。ここは子どもが大人と繋がれる場所」と話す。
 「溢れ出る好奇心に抗わないのがモットー」の佐藤さん。たくさんの人と交流し、話をする中で、自分の知らないことが知れ、新たなひらめきが生まれてくるという。「なんか面白いですよね、人って。楽しいと思う。こんなにいろんなことをやっている人がたくさんいるんだ!って、自分が一番ワクワクしちゃう」と好奇心たっぷりの笑顔で語った。
 佐藤さんには、新しい民営図書館開設の構想があり、すでに次なる場所を探し始めているそうだ。「こういう場所からどんどん繋がっていったらいいかな。どんなところでも、どんな人でも、繋がっていけばいいかな」と、にこやかに語る佐藤さんの本と人をつなぐ居場所づくりは、まだまだ続編がありそうだ。
みんなの小さな図書館 ひとハコBase Instagram

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