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まちづくり・観光
2020.02.26

地域のお宝再発見!和風建築と庭園の”みかた”を伝えたい

新潟市中央区
庭屋一如(ていおくいちにょ)研究会 主宰
藤井 哲郎さん
庭屋一如研究会は、日本庭園や和風建築について、愛好者を増やす・後世に残す・みかたを次世代に伝えることをミッションに掲げ、活動している団体だ。主宰を務める藤井哲郎さんに、庭園や建築の魅力や、活動に込めた想いについて伺った。
きっかけは、旧齋藤家別邸のボランティアガイド
若い頃から和風建築や日本庭園が好きだった藤井さんは、2012年に自宅近くにある旧齋藤家別邸の一般公開が始まるにあたってボランティアガイドが募集されていることを知り、興味を持ったそうだ。旧齋藤家別邸とは、豪商齋藤家の四代目が迎賓館として大正7年に造ったもので、庭園は国の名勝に指定され、主屋は近代和風建築の秀作といわれている。藤井さんはせっかく近所にあるのだから挑戦してみようと応募し、活動を始めた。

ガイドとなった藤井さんは、和風建築や日本庭園について多くの書籍を読んだり、県外で講座を受けて勉強したりしたが、あまり役に立っていないという感覚があったという。「建物と庭園を使ってどのようにお客様をもてなしたのか、どのような思いを伝えたかったのかなどについては、ほとんど説明されていない。専門分野が建築と庭園で分かれており、両方にまたがって語る人がいない」と感じたからだ。

それなら、自分がそうした魅力を伝えていこうと、2015年に庭屋一如研究会を立ち上げ、
日本文化や伝統様式に基づいた日本庭園と和風建築の”みかた”を伝えるセミナーを始めた。見学ツアーと合わせて、これまでの参加者は延べ3,500名を超えているという。
建築と庭の楽しみ方は何通りもある
藤井さんが勧める”みかた”は、まずは直感で建物と庭の第一印象を味わい、それから自分なりの解釈を楽しみ、最後に解釈を手放してもう一度眺める、というものだ。最初と最後では違った印象となることもあるという。セミナーでは新しい知識は最小限にとどめ、伝統様式に共通するビューポイントや、参加者が持っている日本文化についての知識を活かして解釈するツボを伝えることに重点を置いている。日本中の和風建築や庭園を自分なりの解釈で楽しめるようになると、参加者からは好評だそうだ。

セミナーの他にも、和風建築や日本庭園に脚光を当てるイベントも立ち上げているが、その中である想いから始まったのが「上越市名家一斉公開」だ。

新潟県内には、江戸期から昭和初期に造られ、現在も個人が所有し、公開されていない邸宅が多数あるという。そうした邸宅は取り壊しが決まってから初めて新聞等で報道され、存在が知られるケースも多い。そこで、まだ広く知られていない文化財に光を当て、持ち主にも地域にもその価値を再認識してもらえたらと企画したのが「上越市名家一斉公開」だ。

上越市には、江戸時代に庄屋クラス以上だった旧家の邸宅が、子孫所有のままいくつも残っている。2016年秋に藤井さんは、普段は公開していない上越市の5邸の当主・保存会に呼び掛けて、県内外に広く邸宅の魅力を知ってもらうため、同日に公開することを提案した。

まずはお試しで、新潟市出発のバスツアーの開催を呼びかけた。最初は「うちの屋敷に新潟市から見にくる価値はあるのか」「わざわざお金を出して見に来る人がいるのか」と不安な様子であったが、藤井さんが8回上越に通って話をする中で次第に想いが一致。2017年6月のツアー当日には1万円以上の参加費にも関わらず、40人もの参加者が集まったそうだ。

当主の皆さんは、大変驚くと同時にとても喜んでくれたという。2017年11月からはバスツアーだけでなく誰でも見学できる一般公開が始まった。春秋各一日の一斉公開日には1100人から1600人のお客様でにぎわうという。今春は5月17日(日)に開催される予定である。
すべては妄想から!
上記以外にも、新潟市・田上町以北の代表的な公開庭園や伝統建築を紹介する広域観光企画「にいがた庭園街道」、建築や庭を見に訪れた地域を歩き、地元で生産・加工・調理された食を味わう「庭園ガストロミーウォーク」を立ち上げるなど、藤井さんの活動の幅は広がっている。「にいがた庭園街道」の2019年版パンフレットは藤井さんが担当し、一気に広域観光企画らしい体裁に変わった。

藤井さんのアイディアと行動力の源は何か伺ったところ、
「こんな素敵なところをどのように紹介したら見に来る人が喜ぶだろうかと、まずは妄想を膨らませる。これまでの活動の経験から、自分の妄想がどんどん膨らむところは、地縁や人脈がなくても企画が立ち上がるという自信もついてきた」と笑顔を見せる。

「地域のお宝の魅力を発信することは、その地域の過去、現在そして未来を輝かせることと考えている。歴史や文化に光があたり、現在の地域が活性化して誇りが生まれ、親の背中をみた次世代が地域にとどまって未来に継承される。これからも妄想がふくらみワクワクすることを実行していきたい。」と藤井さんは今後の展望を熱く語った。

現在、庭屋一如研究会が取り組んでいる「えちご邸園文化祭」(2020年5月16日~7月26日、えちご邸園王国主催)は、昨年開催された「国民文化祭・にいがた」の盛り上がりを継続してさらに県内の文化振興を図ろうと藤井さんが企画し、35イベントの参加が決定した。4月にはガイドブック配布が始まる。興味のある方はぜひ、足を運んでみてはいかがだろうか。


・庭屋一如研究会
https://www.facebook.com/teiokuichinyo/
・にいがた庭園街道 
https://teienkaido.niigata.jp/

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