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まちづくり・観光
2019.03.26

団体のアイデンティティは「地域-残し」!‐“普通にやっていることの価値”に気づくことから

糸魚川市
波と母船
屋村 靖子さん、佐藤 明日美さん
2人の出会いと思い-「もっとできることがあるはず」「お手伝いできれば」
糸魚川市木浦地区。日本海に流れこむ木浦川から、3キロほどさかのぼった山あいに、「長者温泉ゆとり館」はある。今年4月から、23年間同館を運営してきた地元・中尾区に代わり、新たにバトンを受け取ったのは、U・Iターンしてきた、屋村靖子さんと佐藤明日美さんの2人を中心とした、任意団体「波と母船」だ。地域の声を真摯に受け止めながら、アクションを起こし始めた2人にお話を伺った。

ゆとり館は、浴室や畳の広間を備えた木造の温泉施設だ。渡り廊下を行くと、現在は準備中だが、宿泊もできる茅葺屋根の古民家「ふぁみりー館」がある。建物の前には、バーベキューなどを楽しむことができる「えんじょい広場」や駐車場が広がる。

屋村さんと佐藤さんの2人が出会ったのは昨年の9月。ゆとり館の運営を巡って開かれた、市の説明会だった。「若手の人、しかも女性がいる。誰だろうとお互いに思って(笑)」と佐藤さん。「別々に動かずに協力できたら良いねという時、区長さんたちに企画書を作ってみなよと言われ、本気でやってみよう!と思ったんです」。これが長い船旅の始まりとなった。

屋村さんは埼玉県出身。東日本大震災をきっかけに地方への移住を考えるようになり、たくさんの縁がつながり2016年に木浦地域の1つ鬼舞地区に移住してきたばかりだった。ゆとり館が人手不足だという話は移住して早い段階で知ったそうだ。当時は、木浦地域の1つ、中尾区が中心となって運営をしていた。高齢化などの問題を抱え、働き手を募集する回覧が回ってきた時、屋村さんは「もっとできることがあるはず」と思い、「私に任せてもらえないか」という気持ちが芽生えたそうだ。

一方の佐藤さんは、関東で福祉関係の仕事をしていた頃から、悩みを抱えたお宅を訪問しつつ、個人の課題を地域の課題につなげていく必要性を感じていた中で、地域づくりに関心を持ち始めた。視点が変わったことで、地域の課題も可能性に変わると感じるようになったという。そして、地元で何かできたら、という思いで2016年に糸魚川に戻ってきた。木浦地区に住んでいたわけではないが、ゆとり館には、ときどき家族で訪れていたそうで、運営の現状を知って「お手伝いできれば」と思い、スタッフに聞いたり、市に尋ねたりしていたという。
「地域-残し」という核が出来上がり、運営へ
一緒に企画書を書き始めた頃、地域づくりに関心のあった佐藤さんに声を掛けられて、市主催の「地域づくりコーディネーター養成講座」に2人で参加したことで、地域づくりについて理解が深まり、お互いのイメージも共有できていったという。「初めは、とにかく自分だけでなんとかしなくては、とばかり考えていましたが、勉強する中で地域づくりというのは地域を巻き込んでくことだと考えが変わっていった」と屋村さんは振り返る。

2人が気をつけていたのは、木浦地域を思う人たちに地域を良くしたいと伝えること。その思いを素直に企画書に込めつつ、区長さん世代にも伝わる言葉を意識したところ、区長さんたちの共感を得ることが出来た。自ずと、「地域‐残し」という団体の核となるものができ上がっていたという。市の公募に申し込む際には、区長さんたちが推薦状を書いてくれるという、強力なバックアップがついた。その甲斐もあって、わずか半年の準備にも関わらず、ゆとり館の運営にこぎつけることができた。

「老若男女に関係なく、まずは話を聞いてくれる人たちだったからこそできた」と屋村さんは語った。運営を行うようになった今では、パイプ役となってくれる人もいる。

この2ヶ月の間に、同館の運営だけでなく、地域の外から人を呼んで、わら細工ワークショップを行った。すると参加者や地元の人からも、「この編み方がすごい!」「藁は昔から~」など人と人との交流が自然に生まれていく、そんな場になることもわかった。
ゴールデンウィークにバーベキューを始めた際には、地域の人たちが丸太をもってきて椅子を作ってくれたり、駐車場の景観をよくするためにとひまわりの苗を植えてくれたりした。

「最近、私たちのアクションに反応してくれるようになった。地域を巻き込むってこうゆうことだよなって」「私たちなら形にしてくれるかもしれないって、そう思ってもらえるように、託されたような気持ちでやっていきたい。」と屋村さんは言う。
まだ始まったばかり、先に見据えるものは
今後は、ゆとり館の運営を丁寧に行いつつ、地域の人たちとの関係づくりに努めていきたいという。

「まだまだ始まったばかり。どれだけ受け継いで残して、私たちが次につないでいけるか。残せるものを取りこぼさないようにしたい。」
「お母さん方の料理をレシピに残し、本にしていくなど、思いを大事にしていきたい。」「普通にやっていることの価値に自分たちが気付いていくと、この施設の価値もわかってもらえると思うんです。そうなると、もっと輝き始めますよね。この地域の景観も。自然に来る人のためにと、周りを掃除してくれたらいいなーくらいに思っているんですけど(笑)」と2人は笑顔で語った。

2人が中心となって立ち上げた団体、「波と母船」には、「次々と押し寄せてくる地域課題を、私たちが船の舵取りとなり、良い方向に導く活動をしていく」という思いが込められているそうだ。船旅は始まったばかりだ。
長者温泉ゆとり館

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