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NPO・地域づくり支援
2024.03.06

世代と地域を超えた笑顔とつながりを育む

村上市
一般社団法人高根コミュニティラボわぁら 代表理事
遠山真治さん
新潟県の最北、村上市。三面川の支流、高根川の最上流域、山側の県境に位置する高根集落。四方を山々に囲まれた谷間に、身を寄せ合うように家が建ち並ぶ。約150戸、490人が暮らす地域で、若者たちが中心となり、地域のものを活かしながら、アイデアあふれる活動をしている。代表理事の遠山真治さんにお話を伺った。
大好きな高根で未来を創っていく
 一般社団法人高根コミュニティラボわぁらは2016年5月、40代以下のメンバーを中心として、高根にある豊かな自然を活かした暮らしを未来へつなぎながら、高根に暮らす人たち、そして高根に関わる人たちがイキイキと、笑顔で楽しく過ごしていくことを目指して設立された。団体名にある“わぁら”とは、高根弁で”わたしたち”という意味があり、高根に関わる皆で活動に取り組んでいこうという願いが込められている。

 高根に暮らす人たちが「大好きな高根に暮らせて良かった」と言い合える。
 高根と関わる人たちが「大好きな高根と出会えて良かった」と言い合える。

 そんな絆を深めながら、ぬくもりあふれる高根流の生き方、暮らし方を子どもたち・孫たちの代へつなぐために、自分たちで考え、自分たちの手で高根の未来を創っていこうと活動している。
高根をむすび・つないで育む地域力
 活動内容は大きく分けて2つ。
 1つ目は高根と地域外の人とをつなぐ事業で、高根に生まれ育っていなくとも高根が心のふるさとになり、高根に暮らしていなくともつながっていられるよう、地域外と高根の絆を深める取り組みを行っている。空き家をリノベーションした宿泊施設「ゲストハウス瑞泉閣」や、中長期滞在し高根での移住体験ができる「シェアハウスべったく」の運営、高根の準村民となり、高根のお米購入や行事への参加などを通して高根を応援してもらう会員制度「たかねびと」を実施している。ゲストハウス瑞泉閣は、高根集落のちょうど真ん中に位置し、多世代・多地域の人が集えることに加え、多様な人がやりたいことに挑戦し、活躍する拠点となっている。そんな場と機会があることが、高根の元気と笑顔につながっている。
 2つ目は高根に暮らす住民をむすぶ事業。高根でイキイキと楽しく暮らし、高根愛を育み、誇れる高根の未来を創っていく。高根で暮らす人たちの結びつきを強くする取り組みに力を入れている。子どもからお年寄りまで、世代を超えて気軽に集える場づくりや、子育て支援など、高根で今、そしてこれから必要とされることにチャレンジしている。また、棚田の耕作状況調査、空き家の現状調査等、地域課題に関する調査を行い、地域の現状を見える化することで、皆で未来を描くための第一歩を踏み出すきっかけ作りを行ってきた。
 事業を行ううえで意識していることは、高根で、高根にあるものを活かして実施することだ。自然・伝統・施設・食・人材など、“地域に眠っているもの”にスポットを当てて、若者のアイデアで、魅力ある形にして発信することで、「高根への誇りと愛着を育み、可能性が広がる」と考えている。
かける×プロジェクトで誰ひとり取り残さず元気と笑顔と安心を届ける
 活動の中で特に大切にしていることは、地域課題を踏まえ、限られた1つの事業で複数の効果を得る“かけ算”を意識しながら、未来へつながるワクワクするプロジェクトを展開することである。専従の職員がいるわけではなく、メンバーは皆、仕事をしながら、平日夜や休日に活動を行っているため、限られた時間・お金・人材を最大限活かし、1つの事業を行うときに色々な要素を掛け合わせて成果を得ることを常に考えている。
 それを表す代表的なプロジェクトが「高根クリスマス大作戦」である。地域内外から集まった若者が、全員サンタクロースの衣装を着て集落全戸を回り、プレゼントを配布するという活動だ。2017年からはじまったこの企画は、当初若者たちの婚活出会い要素に加え、子どもたちにプレゼントを配り高根に暮らす親子を応援する子育て支援、高齢者宅も一軒一軒訪問し見守りにもつながっている。
 また、プレゼントを配達するためには集落内の家の件数や家の状況、子どもの人数などの事前調査を行う必要があるため、毎年実施することで地域の現状や変化が分かる貴重な機会となっている。その過程において、地域の若者たちの人材育成にもつながっているほか、毎年新たな要素を掛け合わせ、クリスマスに高根中が笑顔に包まれている。
 コロナ禍では地域外からのサンタが家を訪問することは難しかったため、高根を離れた家族・同級生・友人らに高根住民へ内緒で連絡を取り、クリスマスカードやプレゼントを送ってもらって、家の人にサプライズプレゼントする「スマイルレタープロジェクト」を行った。全世界からカードやプレゼントが200個以上届き、長い間会うことができていない孫や友人からの心のこもったプレゼントに涙する姿も見られた。高根を離れていても高根を想う人たちとのつながりを感じ、高根の外からでも応援できる形があると実感でき、関係人口を増やすこともできた。
 「ヘルスケアサンタ」企画では、全戸に血圧計と、血圧管理、認知症予防の塗り絵などを配布し、高根で元気に長生きしてもらおうと呼びかけを行い、住民の健康意識向上に取り組んだ。
 2023年には、コロナ禍で失われてしまった子どもたちと地域住民の交流を取り戻すことを目指し、「キッズサンタプロジェクト」を実施した。子どもたちが手作りしたお正月飾りを、サンタになった子どもたちが雪の中全戸に配布。頑張ってプレゼント配りをしてくれた子どもたちには、高根の大人サンタたちからクリスマスパーティーをプレゼントした。高根の屋号を学べるビンゴや、防災カルタ、ピザやケーキ作りの体験などを行い、家族親戚以外の大人たちとの交流を楽しんだ。企画全体を通して子どもたちが活躍し、大人たちから感謝される経験から、郷土愛を醸成していくこと、そして高根での子育てを地域全体として応援する気持ちを伝えることにつながり、高根全体が笑顔いっぱいになれるクリスマスを過ごすことができたそうだ。
高根の未来のためにチャレンジし続ける
 高根の今、そして未来のために必要とされることは分野を問わず、とにかくチャレンジする。まずやってみる。そして、自分たちのため、自分たちの子どもたち、孫たちのために未来志向で取り組むことで、より深いつながりとたくさんの笑顔が生まれている。
 人が交わる密度を高めることを目標にしながら、高根に暮らす人たちと、高根を応援する高根の外の人たちの心が通う機会を増やし、かけ算で高根に活力を生み出して未来を創っていきたいと熱く語っていた。

 山奥の集落で展開される今後の挑戦にも注目していきたい。
一般社団法人高根コミュニティラボわぁらのHP

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