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NPO・地域づくり支援
2020.01.23

畑を耕すように、大地の芸術祭の里を耕し続ける。

十日町市
NPO法人越後妻有里山協働機構 スタッフ
飛田 晶子さん
越後妻有地域(十日町市・津南町)を舞台に、3年に1回開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」は、アートを通じた地域活性化の取り組みだ。そこで生まれた作品、施設、プロジェクトを管理運営するNPO法人越後妻有里山協働機構のスタッフとして、食を通じた通年誘客プログラムの運営に携わる飛田晶子さんに思いをうかがった。
自分と違う「ものさし」に惹かれて
学生時代、飛田さんは友人からの紹介で大地の芸術祭を知り、2000年にボランティアスタッフ「こへび隊」として運営に携わる中で、普段とは違う自分を発見したように感じて、東京で就職してからも手伝いをするため通い続けるようになった。

「地域の人と会ったり、一緒にご飯を食べたりしているうちに自分とは違うものさしがあるような気がした。当時はパソコンを見つめる仕事をしていたので、もっと身体を動かして働けたらと思っていた時期だった」と振り返る。

そうした思いに押され、2006年、宿泊施設「越後松之山体験交流施設 三省ハウス」の立ち上げに際し、飛田さんは移住した。
圧倒的な日常に衝撃を受ける
移住後は三省ハウスで8年間、宿泊サービスや接客業を経験しつつ、地域の人から雪国の暮らし方を教えてもらったり、山菜を教えてもらったりと、仕事と生活のつながりが濃い時間を過ごした。「雪量が多いとか感覚的にしかわからなかったことが、暮らしてみて生活の一片だと気付いた。芸術祭からは見えない圧倒的な日常がありました」。

地域にはどんど焼きという伝統行事がある。藁のやぐらを燃やし、五穀豊穣を願い、その燃え方で作柄を占う賽の神の行事で、厄落としの意味もあるそうだ。そこで目の当たりにしたのは、県外に住む血縁の遠い人たちのことまで思って祈る地域の人の姿だった。「山奥の雪深いところから、今は一緒に住んでいない人たちのことを思っていることが衝撃的でした」と飛田さん。

この経験が一つのきっかけとなり、こへび隊と共に地域の人との調整を経て、2008年に「鳥追い・どんど焼きツアー」の実現へとつながった。ツアーは毎年おこなわれ、東京近郊を中心に20~30人の参加があるという。地域の人からは「にぎやかになってよかった」との声もあり、あたたかく迎え入れられているそうだ。
地域の価値を少しでも未来に残す
2008年、芸術祭を核として地域づくりを持続しておこなっていくために、NPO法人越後妻有里山協働機構が設立された。そして現在、飛田さんは、これまでの経験がつながって、地域の資源を発掘し発信する総合文化施設「まつだい「農舞台」」で、食を通じた通年誘客プログラムの運営に携わっている。

具体的には、芸術祭を応援しようと関わってくれているシェフの監修の下、地元の食材を使った新たなメニューを提供するイベント運営や、地域のお母さんが手作りした郷土料理でもてなすプログラム「雪見御膳」の運営などだ。

「雪見御膳」は、お母さんたちが作る郷土料理が一番のおもてなしであると企画され、今年で7回目を迎える。飛田さんは5回目から担当となった。1年目は参加者が100人程度だったが、年々増えてきて、6年間で延べ1500人が参加し、今では12集落で実施するほど規模も拡大している。料理の味、見た目の華やかさ、元気なお母さんたちのおもてなしを通じて地域を知ることができると評判だそうだ。

「なんで、ぜんまいをこうやって食べてきたかとか、背景が参加者に少しでも伝わればと。お母さんたちの端っこで真似事をしながら、少しでも地域の価値を未来に残していけたら」と飛田さん。漆器に乗せられた料理は、畑に植えるところ、山に山菜を採りに行くところから始まり、そこにお母さんたちのつながりとチームワーク、そして技術が加わって地域の冠婚葬祭は成り立ってきたと学んだという。

最近は保存食も発信したいと、近々、企画展が開催される予定だ。
種を蒔き、育てるために、地域を耕し続けていく
芸術祭の来場者数は毎回増加し、2018年には会期50日間で約54万人を記録した。その一方で、「芸術祭の期間外はお越しいただくことがなかなか難しい」と飛田さんは感じている。

「私がずっとしてきたことは、畑を耕すことと同じだと感じています。耕していないと種を植えられない。芸術祭で蒔く種を育てるためにも、作品のお世話をしながら、人と人の関係で続けていくことを大切にしたいと考えています」と語った。

飛田さんの言葉は、どれも地域への慈愛に満ちている。四季折々に開催されるプログラムを通じて、越後妻有の魅力を体験しにぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。
「大地の芸術祭の里」(運営:NPO法人越後妻有里山協働機構)

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