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子育て・教育
2022.12.23

多様な子どもたちが安心して過ごせる居場所で「心の充電」を

南魚沼郡湯沢町
NPO法人cocoiro 代表理事
岡本奈緒さん
古くから温泉街として賑わい、一年を通して多くの観光客が訪れる南魚沼郡湯沢町。NPO法人cocoiro(ここいろ)は、この町で初となる児童発達支援・放課後等デイサービスを運営している。子どもたちが遊び合い、学び合い、安心して過ごすことができる居場所づくりを目指し活動する代表理事の岡本奈緒さんに、法人設立の経緯や活動への想いを伺った。
豊かな自然とたくさんの家族に囲まれ、子どもがのびのびと育つ環境を求めて
 湯沢町出身の岡本さんは、関東の児童発達支援施設に勤務し、多くの子どもたちの療育に携わってきた。県外で結婚・出産し、地元を離れての子育てに奮闘していたが、いつかは湯沢に戻りたいと考えていた。
 核家族で育児に追われる生活の中、心に余裕がなくなっていくのを感じていた岡本さんは、大勢の大人に囲まれてのびのびと子供が育つ環境を求め、徐々に故郷での生活を意識するようになった。コロナ禍で湯沢に避難したことにより、その思いはより高まっていった。
 ちょうどその頃、湯沢町で起業型地域おこし協力隊の募集があることを知人から聞いた岡本さんは、これを機に家族と共にUターンすることを決心した。
 2021年4月に着任し、地域おこし協力隊としての活動がスタート。これまでのキャリアを活かし、子どもの福祉や教育環境整備について、課題の掘り起こしに取り組んだ。そこで浮かび上がったのが、不登校の子どもの支援や、発達支援のできる民間サービスが湯沢町にないという地域課題だった。
 「湯沢でも今までと同じような仕事をしたい。でも、この地域には放課後等デイサービスや児童発達支援の事業所がない。ないなら作るしかない!」
 決意を固めた岡本さんは、法人設立に先立ち、旧保育園をリノベーションした地域の交流拠点施設「きら星BASE」の一室で、子育てに関する困りごとのサポートや、不登校支援、発達に合わせて個別療育を行う教室を、個人事業で開始した。
多くの人に支えられてNPO法人を設立
 事業所開設にあたって法人格が必須となるため、法人形態に迷った岡本さん。子どもたちの成長をサポートするためには、地域や行政との連携が重要と考え、NPO法人を選択した。
 「NPO法人をつくるぞ!」と動き始めた岡本さんを、NPO法人の設立や運営の経験がある知人や、地域おこし協力隊の関係者が支えてくれた。自らを「調べたり書類を揃えたりすることが苦手なタイプ」と表現する岡本さんだが、「人に聞くのは得意。いろんな人から聞いてやってきた。」と話す。
 周囲のアドバイスも受けながら着々と準備を進め、2021年11月にNPO法人cocoiroを設立し、翌年7月には児童発達支援・放課後等デイサービス「ここいろスペース」を開所した。
 「自分の頭に思い描いていることを実現しようとすると、いろんな壁が出てきているけど、すんなり乗り越えられてきている。常にまわりの人に助けられた。」と話す岡本さん。有資格者の人材確保が一番難しかったが、開所寸前まで知人からも声をかけてもらいながら探し、無事にスタッフを迎え入れることができたそうだ。
 法人の理念は自身にも言い聞かせるように、「頼り合い支え合い認め合える社会をつくる」とした。「頼り合うということは私自身も人に頼るし、助けを求められたら支える。そういう趣旨でいるので、率先して頼っていこうかな、という気持ちでおります。」と笑顔で語る。
子どもたちの心の元気を取り戻す場所
 ここいろスペースには湯沢町と南魚沼市からすでに10名以上の登録があり、ほぼ毎日5,6名の子どもたちがデイサービスを利用する。フリースクールcocowa(ここわ)も併設し、生きづらさを感じる子どもと保護者に寄り添ったサポートをしている。
 不登校の子が二次障害的に精神疾患になったり、引きこもりで家から出られない状態になってしまってから介入するのは非常に難しいと、岡本さんは感じている。「外に出られなくなる前に、子どもたちの心をしっかり回復していく場所が必要だが、なかなかその必要性が周囲に伝わりにくい。そもそも、子どもたちの心が疲れていることの認識がない。」と指摘する。
 学校から疲れて帰ってきた子どもたちが、ここいろスペースから帰るときはニコニコ笑顔で元気いっぱいになっていく姿を多く見てきた岡本さんは、学校・家以外の第三の居場所の重要性を訴える。「もう少し発達支援が気軽なものと捉えてもらえればいい。自分で抱えきれなくなってからではなく、予防的な感覚で今から違和感があれば使ってもらいたい。家族が担わなければいけないと思っている人は多い。ここを頼っていいんだよと伝えたい。」と心をこめる。
 さらに岡本さんは「私たちのことを、なんか頼れる地域の大人、というくらいの感覚で認識してほしい。そして、そういう地域の大人を増やしていきたい。」と話す。今後はSNSだけでなく紙媒体を活用した「チラシ作戦」で、地域の人にcocoiroの活動を知ってもらい、様々な特技を持った方に活動への参加を呼び掛けていく意気込みだ。
クラウドファンディングへの初挑戦で広がる支援の輪
 事業所開設資金を調達するため、岡本さんは2022年5月にクラウドファンディングに挑戦した。感想を聞くと「自分は達成できる人間なのか、人としての信頼を試されている気がして、めちゃくちゃしんどかった。」と答えるほど、不安や苦労も多かったという。それでも岡本さんはひたすら目標達成を目指し、支援してくれそうな人に直接メッセージを送って支援を呼びかけ続けた結果、最終的には目標を大きく上回る支援金が集まった。知人からの応援だけでなく、高校卒業以来会っていない同級生や、全く繋がりのない人からの支援もあり、クラウドファンディングをきっかけとした縁も広がっているそうだ。
 「地元なのでいろんな繋がりがあり、話が進みやすい。」と話す岡本さんは現在、ゲストハウスを運営する知人と共に、空き家を活用した居場所づくりの準備をしている。フリースクールの拠点をこの空き家に移し、子どもたちと料理をしたり、一緒にテレビを見ながらくつろいだり、より日常生活に近い子どもたちに寄り添った支援を目指す。
 「みんなが遊びに来られる、みんなの交わる場所にしたい。」と明るく話す岡本さんがつくる居場所は、たくさんの人が笑顔で集う空間になりそうだ。
特定非営利活動法人 cocoiro

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