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健康と福祉
2025.01.21

「子どもが笑えば親も笑う 親が笑えば子どもも笑う」。食を通して、親子の“生きる”をサポートしたい。

三条市
新潟県フードバンク連絡協議会 会長
山下浩子さん
社会的孤立や経済的困難に陥り日常生活が失われている全県のひとり親家庭等の子ども達に無償で食品を届けるフードバンク活動。会長の山下浩子さんに活動への想いを伺った。
子どもの未来応援プロジェクト
 2024年3月現在、新潟県内では25のフードバンク団体が活動しているという。フードバンク活動は、地域性や団体のネットワークを活かしながら、食品を寄贈する企業や個人と、それを必要とする人々の橋渡しをしているボランティア活動。
 そしてそれら地域フードバンク団体が連携し、全県でフードバンク活動の最適化を図っているのが中核的フードバンクの新潟県フードバンク連絡協議会である。
 コロナ禍が始まった2020年春に、当時別々に活動をしていた10のフードバンク団体が連携して、「お腹を空かせている子ども達の為に!」と想いをひとつにし、子どもの貧困対策事業としてスタートした取り組みが『緊急コロナ対策子どもの未来応援プロジェクト』となる。
 その特徴としては、それまで全国ほとんどのフードバンクが活動の範疇としてきた間接支援から、自らの手で困窮している個人に提供する直接支援に踏み切っている事が挙げられる。コロナ禍で公的制度や地域の福祉サービスだけでは生活がたちいかない家庭が急増し、それらの家庭に対し緊急的に有効な支援施策が無い状況下、社会的弱者である子どもの命と育ちを支え、子どもの笑顔を取り戻すことを目的としたプロジェクトとなる。地域フードバンク団体が相互に連携協力しながら、全県の個人を対象とした食支援に、中核的フードバンクが取り組む事例は、全国的にも稀で先駆的な活動となる。
ゲートキーパーの役割を担う
 2023年5月に新型コロナが第5類に移行され、社会経済が上昇カーブを描いている昨今、公的発表の各種数値を鑑みても、ひとり親家庭等の困窮状態は改善してきたのではないか?と捉えている人が多いのではないだろうか。
 しかし、ひとり親家庭の約6割が非正規雇用といわれる中、コロナ禍で下がった収入はそのまま、切り崩して来た貯金も底を尽き、そこに急激な物価高騰が追い打ちをかけ、困窮が固定化している家庭も多く、社会的孤立や経済的困難を抱える生活が長期化したことで、不安やストレスで体調を崩し、精神疾患になる方も少なくないということだ。
 「疲れた…、もう死にたい…」など、追い詰められた悲痛な声が絶え間なく届いていると、山下さんは顔を曇らせた。
 そのため、民間団体の小回り利く基盤を活かし、困った時はお互い様の精神で、休日や夜間を問わずSOSへの即時対応を心掛けているという。フードバンク団体とは言え、もはやその活動は食品の提供にとどまらない。相談者の不安や悩みに「気づき」、「声を掛け」、「聴かせてもらい」、「必要な支援に繋ぐ」。そして「生きることを信じて伴走する」といったゲートキーパー的役割が増しているのが現状だ。
あしながサンタX’masプロジェクト
 新潟県フードバンク連絡協議会が主宰する『子どもの未来応援プロジェクト』の看板事業のひとつに、年末に厳しい生活環境にある全県のひとり親家庭等の子どもたちにクリスマスケーキをプレゼントする事業があるという。
 この事業を始めたきっかけは、支援先の母親からの、「せめてクリスマスくらいは、子どもにケーキを食べさせたい…」という想いを聴いたことによる。クリスマスに親子でロウソクの灯りが点いたホールケーキを囲み、サンタクロースからのプレゼントで心が温かさに包まれる。ひと際生活に苦しさが増す年末に、笑顔で過ごすひと時を親子に提供したいとの願いのもと、行政や企業、県民やNPO等がワンチームとなり動き始めたのが2020年の夏だという。
 まずはクリスマスケーキの購入資金の問題。冷蔵品であるケーキの品質を保ったまま安全に手渡す方法。多くの関係機関の理解と協力体制の構築をどう整備できるのか。課題が多すぎて、企画を立てた当時、このプロジェクトは雲をつかむような話だと一笑に付されることが多かったという。その当時の記憶を辿ると「もう無理だ・・・」と、何度も弱気になったと山下さんは語った。
 しかし、何としてでも子ども達へクリスマスケーキと共に、社会は決して見放してはいないのだというメッセージを届けなければ!と、諦めずに取り組んだ結果、申込みのあった全県のひとり親家庭へクリスマスケーキを届けることに無事成功。試行錯誤しながらも毎年続け2023年には4回目となり、毎年2,500~3,000個のクリスマスケーキを届けているという。
 この取り組みには株式会社セブン-イレブン・ジャパンが全面的な協力で、品質も安心で安全、各家庭の都合に合わせてのお渡し方法が実現でき、最大の難関だった資金面も、READYFOR株式会社のクラウドファンディングを利用することにより、この取り組みの大切さを自分事と捉えた「あしながサンタさん」達が全国から参集。多くの篤志家に支えられ活動が継続できているそうだ。
 クリスマスケーキを受け取った家庭からは次の様なメッセージが寄せられているとのこと。
「久しぶりに、子どもらしい笑顔を見ることができた。」
「社会の多くの善意が私達のことを見守ってくれていることがわかり励みになった。」
「親子そろって素敵なクリスマスの思い出ができた。」
 などなど。子どもの未来応援プロジェクトのLINE公式アカウントには、毎年感謝のメッセージと共に子ども達の輝く笑顔の写真がたくさん届くそうだ。
 一方で、志金を寄せてくださったあしながサンタさんからも、「自分も誰かのサンタクロースになれた!」、「多くの子ども達に素敵な思い出を届けられて嬉しい。」「4年連続でサンタになれる機会をもらい感謝している。」といったメッセージが多数寄せられている。
 返信する山下さんも「善意を受け取る方も、渡す方も、お互い嬉しくて幸せで満たされると、改めて感じました。」と、嬉しそうに語った。
そしてこれから
 あしながサンタX’masプロジェクトに限らず、他の活動でも一団体だけでは到底できない様な大きな社会貢献を多職種が連携し、パートナーシップで取り組む事で、できる人ができることをできる時にする。あきらめずにひとつひとつ組み立て、理解を求め、社会課題を自分事として動くことができる味方を増やす。そして想いを持って活動を継続すること。そうすれば、やがて順々に様々な形で恩を送っていくことができるということを山下さんは常に心に留めているという。

 経済的に厳しかったり、孤独・孤立の中で子育てをしたりしていると、気持ちが追い込まれ、余裕も無くなり笑顔を忘れてしまいがち。そして、そこで育つ子ども達も、自分の将来が未来を明るいものとは捉え難く、自分さえ我慢すれば…と、子どもながらにいつも自分を押し殺して人生を送る様になってしまう子も。

子どもが笑えば親も笑う。親が笑えば子どもも笑う。

 米どころの新潟で育つ子ども達が、いつもご飯を心配することなく、美味しい美味しいと言って頬張り、モグモグとお腹いっぱい食べること。その姿を見て大人も安心し心も満たされること。そういう姿を、地域社会全体で支えるフードバンク活動を通じて寄与していきたい、と山下さん。

 最後に、「この記事に縁のあった皆様方にお願いです。今この瞬間、社会から孤立し厳しい生活環境にある子ども達のために、特段のご支援を賜ることができたらありがたいです。ともに手を取り合って子ども達の未来を応援していきましょう‼」と熱い想いを語った。
新潟県フードバンク連絡協議会のHP

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