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健康と福祉
2019.06.25

自分を救ってくれた「表現することの楽しさ」を伝えたい

新潟市中央区
K-BOX 代表
梨本 和彦(Kacco)さん
6月のある日曜日、新潟市総合福祉会館の一室でライブが開催された。歌やパフォーマンスを披露するのはK-BOXというプロダクションに所属するアーティストで、全員が心の病やひきこもりの経験者だ。ライブの司会を務めるのは、K-BOX代表の梨本和彦さん。自身も「癒し系表現者Kacco」として活動している。活動を始めたきっかけや、想いについてお話しを伺った。
表現することが、楽な時間
K-BOXには、タレント部門、ミュージック部門、アート部門、パフォーマンス部門の4部門があり、歌手やピアニスト、ダンサー、お笑い芸人など様々なアーティストが所属している。毎週行なうレッスンや定期的に開催するライブのほか、最近ではイベントや地域のお祭りに呼ばれることが多く、1日にお祭りを3つハシゴするアーティストもいるそうだ。

梨本さんが活動を始めたきっかけは、自身が躁うつ病や拒食症、5年間のひきこもりで苦しんでいたときに、表現する楽しさを知ったことだ。旅行会社に勤める母親の知人が、子どもの頃から絵が好きで得意だった梨本さんに、パンフレットに掲載する絵を描いてほしいと頼んできたことがあった。最初は断っていたが、その知人は梨本さんの苦しい胸中に耳を傾けてくれたという。自信はなかったが、話を聞いてくれた知人のためならと、絵を描くことに決めた。

「絵を描くようになると、明らかに体調が良くなった。好きなことには没頭できるし、好きなことをしている間は病気の不安もなくなる。楽な時間って楽しいことをしているときなんだ」と気づいた梨本さんは、その時間をもっと増やそうとさらに絵を描くようになり、旅行パンフレットへの掲載は2年ほど続いた。その後現在に至るまで、20年近く服薬していないという。

この経験から、自分のように、表現することで変われる人がたくさんいるのではないか、と思うようになった。当時の新潟を見回してみると、作業所や自助グループはあるものの、自分を救ってくれた「表現すること」ができる場所がないと感じ、それなら自分がつくろうと、団体を立ち上げることになった。
パフォーマンスには妥協しない
団体を立ち上げた当初は、メンバーも少なく、レッスン中心の活動だった。チラシや口コミでメンバーが次第に増え、ライブを開催できそうな体制が整ってきたものの、パフォーマンスを披露する機会がなかなか得られなかった。ライブをさせてほしいと様々なイベント団体等に声をかけるが、K-BOXの名前が知られていないし、「病んでいる子がイベントを盛り上げられるのか」と思われることもあった。それでも梨本さんは、「とにかく1回見てみてください」と自主開催のライブに招待したり、地道に活動を続けてきた。今ではCDデビューをしたり、CMや映画に出演したり、県外のイベントに出演するアーティストも増え、地域おこしの一環でご当地のゆるキャラソングを任されるまでになった。「来年も、次回もよろしくお願いします、と言われたら大成功。何よりの励みになる」と梨本さんは言う。

このように確実に活動を広げてきた梨本さんには、パフォーマンスへのこだわりがある。「心を病んでいるから、完成度はこれぐらいでいい」という妥協は絶対にしないことだ。どこに出ても通用するためには、パフォーマンスを磨くことはもちろん、礼儀やマナーを身に付けることが必要不可欠だ。きちんと挨拶をしたり、お客さんに話しかけたりすることで、自分たちでライブ会場の雰囲気をつくっていく。こうしたスキルは毎週のレッスンやライブを通して自然と身に付くそうだ。

「協力して声を掛け合わないと、レッスンもできない。ライブの準備も進まないし、本番だってめちゃくちゃ。先輩は後輩の面倒をみるのが当たり前。タテ社会は今どき嫌われるけどね」と梨本さんは笑う。
表現の世界では、何でも個性!
梨本さんが”Kacco”として舞台に立つときはいつも、女性の恰好をしている。理由を聞いてみると、コンプレックスについて発信したいことがあるからだという。昔から華奢な体型で、小さい手や細い足が嫌で生きづらさを感じていたが、表現の世界に出会い、この世界では何でも個性に転換できると知ってから、ガタイの良い男性が着られない服を着よう!とこのスタイルを始めたそうだ。「コンプレックスは誰もが抱えていて、病気に関係ない。逆転の発想で生きやすくなることを伝えたい。」

また、今後の展望についてうかがった。
「パフォーマンスを披露する場所をどんどん広げて、単純にステージを楽しみたい人にも生きづらさを感じている人にも、表現することを好きになってもらうきっかけとなればいい。夏には年2回行なう自主開催ライブ「K-BOXのバカ騒ぎ」があるので、それに向けて各々パフォーマンスを磨いていきたい。」
K-BOXの仲間になりたい、協力したいという方は、まずはライブを見に行かれてはいかがだろうか。

K-BOX:http://www.k-box-niigata.net./

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