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社会教育
2022.03.18

馬とのふれあいで未来を担う子どもたちの可能性を拓く

胎内市
NPO法人松原ステーブルス 代表理事
明星泰崇さん
胎内市築地地区で、引退馬や働きを終えた馬が余生を過ごす養老牧場を運営しているNPO法人松原ステーブルス。馬とのふれあいを通して、馬と人との関係性や命の大切さを子どもたちに伝える活動をしている。代表理事の明星泰崇さんに話を伺った。
馬の命を救う牧場を持続可能にするために
 松原ステーブルスは、けがなどにより競走馬として活躍できなくなった引退馬や、行き場のなくなった馬を引き取り飼育している全国的にも珍しい養老牧場だ。騎手としても活躍した調教師の松原正文さんが、年間約7,000頭の馬が殺処分されている現実を見て、「一頭でも多くの馬の命をつなぎたい」と2005年に始めた。牧場では現在、サラブレッドや木曽馬、寒立馬、ミニチュアホースなど16頭が、広々とした静かな環境の中でのびのびと余生を過ごしている。

 代表理事を務めるのは明星泰崇さん。過去には、粟島浦村の「しおかぜ留学」に携わり、馬の飼育を通して命の教育を提供する活動を経験した。粟島で初めて馬の魅力に触れたことで、子どもが馬の世話をしながら馬とともに暮らすことにより様々なことを習得し、心身ともに健康になることを実感していた。この活動がきっかけとなり、粟島を離れたあとに自宅でミニチュアホースを飼いはじめた明星さんは、自分の子どもたちが馬に親しむ姿を見て、より多くの子どもたちに馬とのふれあいを届けたいと思うようになった。

 明星さんは、松原さんが50年ぶりに復活させた胎内市下赤谷の馬頭観音祭「シャングシャング馬」の会場で松原さんと知り合い、馬の飼育に関する技術的なアドバイスを受けるようになった。ある日、「馬とのふれあいを活用して困難を抱える子どもたちの支援をしたい。」と松原さんに相談したところ、NPO法人化の提案を受けた。松原さんも牧場の後継者を探していたこともあり、馬の殺処分問題と困難を抱える子どもたちの支援、これらの社会課題を解決する方法として、NPO法人設立の道を勧められた。
 明星さんの中で迷いはあったが、「技術面は松原さんが担保してくれるし、自分には粟島での経験がある。この牧場を松原さんの代で終わりにしたくない。」と覚悟を決めた。こうして明星さんは、松原さんが個人で運営してきた牧場を事業承継し、2021年4月にNPO法人松原ステーブルスを設立した。
「うま友留学」で馬とともに生きる暮らしを体験
 松原ステーブルスでは予約なしで厩舎の見学ができ、気軽に馬を見ることができる。天候や馬のコンディションが良ければ、乗馬体験もできる。学校単位で見学に訪れる小学生や、修学旅行のコースに取り入れる学校も増えてきた。
保育園や幼稚園、介護施設へ馬を連れて訪問し、多くの人に馬に親しんでもらう活動も行っている。お年寄りの中には、子どもの頃に家で飼っていた馬を思い出し、涙する人もいるという。
 「NPO法人化したことにより信用度が高まり、施設を訪問しやすくなった。」と明星さん。馬を連れて保育園や幼稚園、小学校、障害児デイサービスなどを訪問し、多くの子どもたちに馬とふれあう経験を提供したいと考えている。

 松原ステーブルスの主力事業のひとつに「うま友留学」がある。約1年間親元を離れ、馬と生活を共にする、小学5年生から中学3年生を対象としたプログラムだ。発達障害や不登校など、いまの環境を変えたいという子どもたちを受け入れており、平日のみや週末のみの留学も可能となっている。
 明星さんらは、空き家だった近隣の家を宿舎に改装して、馬を飼育できるスペースを完備した。日々の食事の支度や身の回りの世話は専任のスタッフが担当し、子ども達は牧場で馬の餌やりや厩舎の管理を手伝ったり、宿舎で飼育している馬の世話も手伝う。住むところにも活動する場所にも、常に馬がそばにいるというプログラムになっており、馬の世話を通して、各自ができることを伸ばし、社会に参加していく力をつけていくことを目指している。
 「馬とともに生活することで、責任感や自立心を養い、命の大切さを学ぶことができる。短期間ではわからない、伝えきれない部分がある。子どもたちが使命感を持ったと感じたときが成長を感じるとき。とてもやりがいがある。」と明星さんは話す。
馬との交流を通じて生きる力を育むホースセラピー
 明星さんの話によると、馬から得られる精神的効果は、アニマルセラピーとして一般的に知られる犬や猫を上回るとされ、海外ではホースセラピーとして医療に取り入れられているそうだ。医療、教育、スポーツ・レクリエーションの側面から様々なセラピー効果が期待できるという。
 「馬と犬や猫との違いは、乗れるということ。正しい乗り方をすれば、筋力のトレーニングや、内臓機能の調整など、身体的にも良い効果がある。」と明星さんは話す。松原ステーブルスでは、かつては寝返りもできなかった人が、馬に乗れるようになった実績もあるそうだ。
 「ホースセラピーの理論は日本でも注目されはじめているが、海外よりは20年ほど遅れている。現段階では提供が難しいが、理論的に有効であることは伝えていきたいし、子どもたちにも提供していきたい。」と明星さんは展望を語る。
地域の持続可能性を視野に入れた活動
 牧場のある築地地区の方との交流も多い。馬を眺めに来たり、農家の方が厩舎に敷くもみ殻を提供してくれることもある。
 年々過疎化が進み、子どもが少なくなっているため、明星さんが「うま友留学」の宿舎で作業をしていると、「子どもたちはまだか?」と声をかけてくれる人もいるという。
 「あと十年もすれば空き家ばかりになるのではないかと、地域の方からも心配する声が聞こえる。馬と一緒にだったら、自分たちにも解決できるのではないかと思っている。他にこういうことをやっているところもないので、うちの取り組みは面白いかなと思う。」と明星さんは話す。

 最近では胎内市で活動する若者有志グループBASE CRAFTER ( ベースクラフター )と連携して、牧場の一部をキャンプ場として貸し出している。胎内市を盛り上げたいと地域の活性化を目指す若い世代による新しい取り組みだ。
 「ここに来れば自然があるし、馬もいる。馬がいるということが自分たちの一番の強み。」と明星さんは話す。「馬の可能性は無限。」と松原さんも言う。
 松原ステーブルスは高速道路のインターから一直線というアクセスの良さも売りのひとつ。今後も空き家を活用して宿舎を増やし、松原ステーブルスを拠点として多くの人を呼び込むことで、地域を活性化していくことも狙っている。

 「ここで育った子どもたちが、馬に興味を持って牧場を受け継いでくれるかもしれない。100年後に馬がいなくなっているとは思わない。馬の世話は機械化が難しいので、人の手でやらなければいけない仕事だと思う。雇用の観点からも一生なくならない仕事だと思っている。」と話す明星さん。これからの未来を担う子どもたちに、生きる上で大切なことを伝えていきたいという想いが伺えた。
 松原ステーブルスにはだれもが馬と一緒に自然を体験できる素晴らしい環境が揃っている。海から吹く風を感じながら乗馬ができる牧場で、馬と心を通わせてみてはいかがだろうか。
NPO法人松原ステーブルス

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