にいがた協働の広場

TOPにいがた協働の広場協働事例一覧家族のようにつながり、支えあう『協働の子育て支援』が育む親子の安心感
子育て・教育

家族のようにつながり、支えあう『協働の子育て支援』が育む親子の安心感

2024.03.06
内容
「つながろう、支えあおう、家族のように」をモットーに、村上・関川地域を中心に子育て支援・家庭教育支援の活動を続けるNPO法人村上ohanaネット。昨年、設立から10年の節目を迎え、ますます活発に、地域の子育て家庭からのニーズを柔軟に取り入れながら、文字通り『妊娠期からの切れ目のない支援』に取り組んでいる。団体理事長、渡辺ひろみさんにお話を伺った。
協働の形態
事業協力
協働の主体
NPO法人村上ohanaネット、村上市家庭教育支援チームwith、村上市・関川村関係課、教育委員会、県内外の子育て支援NPOや団体、村上市・関川村保育園、幼稚園、学校
自治体
地域から受けた優しさを、地域で子育てする人に還したい
 渡辺さんは初めての子育てを、夫の転勤先でスタートした。当時心身の不調も抱え、知り合いが一人もいない地での子育てに「不安しかなかった」という。しかし転勤翌日から、隣人や近所の人々が次々声をかけ、時に家に招いてくれ、温かい交流が始まった。特に隣人の老夫婦は、子どもの託児はもとより、当時運転できなかった渡辺さんと子どもの通院の付き添いや、時々食事を作って持ってきてくれたりといった家事の支援など、今でいうところの産後ケアサービスにあたるようなサポートを自然に続けてくれた。その隣人にとってはご近所付き合いの延長であり、特別なことではなかったというが、血がつながらないお隣さんとの家族のような、家族以上のお付き合いのおかげもあり、渡辺さんの不調もどんどん回復した。そしてご近所やママ友に支えられ、見知らぬ地で楽しく子育てができ、見知らぬ土地に「第3の故郷」と感じるほどの愛郷の念を覚えるまでになった。
 
 地域から受けたこの温かな子育て支援は強烈な記憶と動機となり、村上に帰郷後、この地で子育てする、自分と同じように困難を抱えた状態で子育てするママやパパに、自分がしてもらった子育て支援を還元したいと考え、2013年に村上ohanaネットを夫と共に立ち上げ活動を開始した。自身の経験から、特に保護者への支援に力を入れると決めて、子育て中の保護者への心身両面からのアプローチイベントや交流活動を行う中で、利用者として知り合った母親たちから、オハナネットの活動や地域での子育てについて意見や提案をもらい、活動に反映させていった。やがてそうした母親たちがオハナネットの活動を支える「オハナサポーター」として活動を支えるようになった。2020年には法人格を取得し、NPO法人としての活動を始めた。
子育ての悩みもニーズも多様。だから子育て支援も地域「みんなで」やるのがいい
 渡辺さん自身、子育てを振り返って、たくさんの問題にぶつかったと感じている。産前産後の自身の体調・メンタル不調、子どもの発達に関する問題、不登校などの学校問題、子どもの思春期への対応、その他諸々である。実際活動を始めてみると、子育て中の保護者からは、多種多様な悩みや不安などの相談、それに対する支援の要望があり、とても自団体のみで対応することは無理だと分かった。地域には行政の子育て支援サービスや支援施策があるため、もちろん積極的に行政と連携して支援を行ったが、柔軟に対応できるかというと難しく、政策等の関係から対象と対象のはざまで支援からこぼれ落ちる親子もおり、行政以外の民間支援団体との連携が必要だと感じた。地域には、対象が異なる様々な子育て支援、若者困難者支援を行う団体が複数あり、渡辺さん自身そうした団体の活動に参加してその団体の活動を理解し、代表と話し信頼関係を築いたうえで、必要性や希望によって、そうした団体に親子をつなぎ、ともに支援する形を取っていった。2017年には、地域で活動する6つの団体(現在は5つ)と合同で、「村上市家庭教育支援チームwith」を立ち上げ、全国でも珍しい協働の子育て支援を展開している。

 こうした協働の子育て支援は特に、コロナ禍や災害時などの非常時に力を発揮した。コロナ禍での学校、保育施設臨時休業時には、低学年児までの託児支援を行った。2022年村上関川豪雨災害時にも、子どもの預かり支援、居場所作り、親子のメンタル支援などを行い、協働して地域の親子を支えることができた。家庭教育支援チーム以外にも、父親支援団体と協働して「パパスクール」や「パパサークル」を立ち上げたり、フードバンクと連携して困窮する子育て家庭の支援にあたったり、常に協働を念頭に活動している。こうした協働の活動は、複数の団体が有する専門性や子育て支援力が合わさることで、より必要とされる支援が届けやすくなり、負荷が軽減して活動を継続しやすくなるという支援者側のメリットが大きいだけでなく、支援を受ける受益者にとっても、地域の大きな子育てセーフティーネットを実感し、安心して子育てできることにつながる、という。孤独な子育ては親子にとって厳しいものとなるように、「子育て支援もみんなでやるのが正解だ。」と渡辺さんは力強く語った。
つながって、支えあって、家族のように子どもを育てられる地域を目指して
 「子育て期間は意外と長い。一番手がかかるのが乳幼児期の家庭もあれば、成長後に様々な困難や問題が明らかになったり起こったりして、支援が必要となる家庭もある。」 そのため村上ohanaネットでは0歳~18歳までの子どもを持つ保護者や家族の支援を行っており、事業活動が多岐にわたる。

 0歳には産前も含まれるため、現役ママやパパが先輩として講座を行う「プレパパママ応援教室」、親子の交流広場「ママカフェ」、不登校の子を持つ保護者交流会「ホッと一息ランチ会・交流会」、父親支援を目的とする「村上パパスクール」「村上パパサークル」等を定期的に開催している。また多くの活動に、利用者も兼ねる「オハナサポーター」が支援者として協力することや、子どもがいてもやりたいことをあきらめないでやってほしい、という思いから、ほとんどの活動は託児付きで行っている。

 子育て中の保護者ニーズから事業化したサービスも行っている。託児サービス「子守りし隊」は、研修を受けた託児ボランティアが保護者ニーズに合わせて複数名で対応する。メンバーは、村上市のファミリーサポート会員にも登録し、出来るだけ自治体のサービスや補助を活用し、受益者負担を軽減しながら、その対象に該当しないものについては団体で柔軟に受け入れ対応するなどして、自治体と連携している。その他、託児や家事支援、相談支援などを行う産前産後ケア事業「おたすけママ」や、コロナ禍にダメージを受けた子育て家庭の経済支援として始まった「リユースプロジェクト」では、制服のリユース、子ども服や子育て用品リユース、女性への生理用品配布、フードバンクと連携したフードドライブの4本柱で活動を展開し、地域に必要とされる事業へと発展している。
 
 どの段階でつながった親子とも、出来る限り継続して交流を続け、支援が必要な家庭の把握や、家庭側から支援の要請が出しやすいように努めているが、村上ohanaネットがこだわるのは「とことん保護者や子どもを含む家族に寄り添うこと」。自分の家族と同様に、今必要な助けは何か、自分たちができることは何か、愛情をもって前向きに考え、協力して行動に移すことで、絶対に子育てしている人を孤立させない。「家族を思いやるように、確認しながらだが、家族にするのと同じことをすればいい。私が転勤先でしてもらった子育て支援はそういう自然で温かなものだった。『例え自分が倒れても、その時はあの人にお願いしよう、あのサービスを使おう』と手助けしてくれる人の顔やサービスのイメージが複数思い浮かぶことが理想だ。」そう渡辺さんは語る。

 つながった手を放さず、家族のように支えあって「みんなで」子育てができること。その安心感こそが生み育て、暮らしやすい優しい地域づくりにつながるのだと、村上ohanaネットの活動を通して感じずにはいられない。協働を通した子育て応援の取り組みは、今後もさらに広がってゆくだろう。
NPO法人村上ohanaネットのHP

「子育て・教育」の協働事例バックナンバー

2021.10.28
ママの笑顔を応援したい。産前から産後、その先もずっと。
市町村