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社会教育

あらかわチャレンジ SDGs✕地域貢献活動で持続可能な地域づくり

2022.10.13
内容
村上市荒川地域では、荒川中学校と地域住民が連携し、SDGsを軸とした地域貢献活動に取り組んでいる。中学校の総合学習から始まったこの活動は、学校・行政・事業者・地域住民が協働し、持続可能な地域づくりや社会課題の解決を目指し、地域全体で大きな広がりを見せている。
あらかわチャレンジ事務局の酒井幸子さん(荒川中学校地域連携コーディネーター・村上市金屋地区集落支援員)、小田和浩さん(村上市役所荒川支所地域振興課・あらかわ地区まちづくり協議会事務局)、柏櫓和子さん(荒川商工会)に話を伺った。
協働の形態
事業協力
協働の主体
あらかわ地区まちづくり協議会、村上市立荒川中学校、荒川商工会
自治体
中学校からはじまったSDGsを軸とした地域貢献活動
 荒川中学校では、2018年から総合的な学習の時間にSDGsについて学んでいる。SDGsを通して、世界で起こっている様々な問題や地域の課題を知り、その課題を解決し、持続可能な社会を実現するために、生徒が当事者意識をもって主体的に行動を起こせるようになることを目標としている。当時3年生の担任であった増田有貴先生が取り入れたのが始まりだ。
 その中で、中学校での地域貢献活動をどのように進めていくか、地域連携コーディネーターである酒井さんに相談があった。「最初に先生からこの話を聞いたときは、何をしようとしているのか想像もつかなかった。」と酒井さんは振り返る。先生から説明を受けると、このSDGsを活かした学び場づくりの構想に期待が高まったという。
 酒井さんは村上市荒川支所の職員(岸宗光さん)と共に学校に招かれ、荒川地区の現状についての講話を担当した。酒井さんの話を聞いた生徒達は、SDGsのコンセプトを理解した上で、自分たちが住む地域の課題は何かを考え、自分たちにできることを企画し実践した。
 中学校の文化祭では、「地域貢献バザー」として、生徒が主体となって企画した地域の特産品の開発・販売、地元地域の宣伝やPR活動に取り組み、売り上げの一部を西日本豪雨水害の義援金などに充て、中学生でも地域貢献活動ができるという大きな自信と達成感を得ることができたという。
 一部の学年から始まったSDGsの学びは、翌年から全学年、全職員へと展開していった。校内にSDGs関連の文献や資料を集めたSDGsコーナーを設置したことにより、生徒がSDGsにふれる機会が増えて、学校全体に取組が広がっていったそうだ。
SDGsの学びを地域の課題解決へ
 中学校と地域連携コーディネーター、まちづくり協議会と、限られたメンバーではじまった活動であったが、3年目となる2020年に、荒川商工会が加わり、さらに連携の輪が広がった。商工会の柏櫓さんが、学校で地域経済の現状を伝える授業を担当し、生徒は自分ごととして捉えて、地域経済活性化に向けて何ができるか、様々な視点で考えた。
 環境・経済・まちづくりなど、生徒の問題意識は多様で、生徒が課題解決のアイデアを出すと、酒井さんらがその企画を実現できそうな人を探し、交渉する役割を担った。また、学校で中学生が考案した地域貢献活動の企画プレゼンテーション発表会を開催し、商工会の呼びかけで集まった地域の事業者と生徒のマッチングが実現した。
 この取り組みをさらに発展させるために、2021年に「あらかわチャレンジ」事業が発足し、産官学協働の組織として、まちづくり協議会内に事務局が設置された。酒井さんをはじめ、学校、行政、事業者、地域住民、それぞれ別の組織に所属するメンバーが、この地域の未来を真剣に考え、対等な立場で役割分担し、地域内の三方良し(生徒・地域事業者・地域住民)を目標に掲げ、持続可能な活動として定着できるように地域全体の受益を意識しながら活動を展開している。
 メンバーの中には荒川中学校出身の大学生である櫻井隆樹(さくらいりゅうき)さんもいる。まちづくり協議会の活動拠点の遊具のペンキ塗りに参加したことがきっかけで、地域への愛着が芽生え、この活動に参加したいと手を挙げてくれたそうだ。櫻井さんは、事業のロゴマークやタグライン(事業の考えを端的な言葉で表現したもの)作りなど、プロジェクトの重要な部分に大きく貢献し活躍している。
 2021年には荒川中学校の3年生が18班に分かれて、企画書作成から実施まで取り組んだ。活動の内容は、地産地消のスイーツの開発、お弁当の販売、SNSによるオンラインツアー、まちの魅力を発信する写真集製作、空き家の活用、つどい場「あら、ほっ」の壁画アートなど、バラエティに富んでいる。生徒の力だけでは実現不可能な企画も、地域事業者のサポートにより実現することができた。
 地域の大人たちの協力体制について、商工会の柏櫓さんは「中学生たちが頑張っている姿を見て、事業所さんも刺激を受けた。最初はなんとなく中学生に協力してあげるスタンスの人が多かったが、2年目以降はみんなで作っていける喜びを事業所さんも感じていた。」と話す。地域の未来を真剣に考える中学生と、それを支える大人たちの協力があって、地域全体で活動が大きく盛り上がっていった。
 まちづくり協議会の小田さんは、「ある生徒は、やりたいと言ったアイデアに対し、そんなのできないよとダメ出しをするのではなく、こうしたら良くなるとアドバイスを貰ったことが嬉しかったと話していた。自分を受け止めてもらえたことが嬉しかったのだと思う。」と話す。SDGsをきっかけにして、産官学の横のつながりが広がった上に、生徒が地域の大人と関わることによって、自分たちが住む地域の良さや人々の温かさを感じられているという。
持続可能な地域を目指してチャレンジが受け継がれていく
 地域の大人と共に活動することで、楽しみながら何事にも前向きに挑戦する大人たちの姿を目の当たりにした生徒たちからは、「この地域が好きになった」「大人になってもこの地域に住みたい」「将来はSDGsに関わる仕事をしたい」という思いが寄せられたそうだ。「中学生という多感な時期に、地域に興味を持つことは、この後の世代にとって大事なこと。」と柏櫓さんは話す。
 中学生が活動している様子は地域の月刊まちづくり広報誌で紹介されるため、住民の関心も高い。小さい子供からお年寄りまで、身近な生活の中にもSDGsを意識する人が増えてきたという。  
 さらに、この活動は新潟SDGsアワード(注)で2020年度に大賞、2021年度に審査員特別賞を受賞し、SDGsの取り組みの先進事例として県内外から注目を集めている。
 「あらかわチャレンジで大切にしていることは、未来にわくわくする気持ち。これがないとモチベーションが上がらないし、加わってくれる人も増えていかない。わくわくは大事。」と話すのは小田さん。小田さん自身は行政の立場で関わっているが、この地域の人たちの優しさに触れ、地域のために貢献したいという思いが強まったという。
 今後のあらかわチャレンジについて酒井さんは、「SDGsという点でいうと、中学生の掲げた目標が、途切れないで継続していくことが大事。組織化、マニュアル化し、担当が変わったら終わりではなく、あらかわチャレンジの組織自体を持続させていくことが課題になる。」と話す。
 生徒たちが、持続可能な地域づくりのため、学校文化としてこの活動を受け継いでいくことで、大人になったときにこの地域を盛り上げる人材へと成長していくことが期待できる。課題解決に向けて挑戦する中学生と、まわりで温かく見守り応援する大人たちがいる荒川地域の未来は明るいと感じた。

(注)「新潟SDGsアワード」は、一般社団法人地域創生プラットフォームSDGsにいがたが新潟県内での企業、団体、個人によるSDGs関連の優れた取り組みを表彰するために開催している。
あらかわ地区まちづくり協議会ホームページ

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