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文化・芸術・スポーツ
2023.02.27

新潟から被災地を応援 ダンスで笑顔と元気を届けたい

新潟市南区
NPO法人新潟恩返しプロジェクト 理事長
小口亜矢子さん
東日本大震災で被災した岩手・宮城・福島の3県へ義援金を送るため、チャリティーダンスフェスタ「百花繚乱」を開催しているNPO法人新潟恩返しプロジェクト。理事長の小口亜矢子さんに活動への想いを伺った。
被災地のために私たちができることを
 新潟恩返しプロジェクトは、東日本大震災の被災者を支援するため、震災直後の2011年からチャリティーダンスフェスタ「百花繚乱」を開催している。このイベントは、震災復興への関心を風化させないよう、できるだけ多くの方に関わってもらいながら、ダンスを通じて笑顔と元気とともに1円でも多くの募金を被災地に届けることを目的としている。
 サルサダンスインストラクターである小口さんは、震災発生当時、ダンス仲間とともに「私たちも被災地の力になりたい」と支援に向けて動き出した。メンバーはみな仕事や家庭があり、ボランティアとして現地に行くことは難しかったが、「ダンスを通じて被災地の支援ができるのではないか」と考え、百花繚乱を開催することを決意した。

 開催までの短い準備期間で、後援、協賛、出演チームの募集などを行わなければならなかったが、知り合いのダンスの先生に問い合わせたり、市内の公民館に登録しているダンスチームに手当たり次第電話をかけて出演を依頼するなど、メンバーが手分けして交渉を行った。
 その結果、このイベントの趣旨に賛同してくれたダンスチームが多数集結し、第1回百花繚乱は大成功。会場では145,428円の義援金が集まった。その半年後には第2回を開催。以降も開催は続き、今年の3月には第16回となる百花繚乱2023の開催を予定している。
「震災を風化させないためにも、続けていくことが大切」と小口さんは話す。
百花繚乱で新潟のダンス界を盛り上げる
 これまで、百花繚乱に出演したダンスチームの延べ数は、ゲスト出演高校10校と一般出演93チーム。観客動員数は33,600人以上にのぼり、新潟でダンスに関わる人なら誰でも知っているほどの人気イベントとなっている。フラダンス、ジャズダンス、キッズダンスなど、ステージで踊るチームのジャンルも様々で、2歳の小さな子どもから、90歳のフラダンサーまで、出演者の年齢層も幅広い。
 会場受付に募金箱を設置して来場者に支援を呼びかけ、集まった募金は全額被災地に送っている。イベント当日はボランティアスタッフが運営を支え、会場費は企業や個人による協賛金で賄われる。
 募金を集めて被災地へ送ることが目的のこの活動。当時、義援金詐欺なども発生していたこともあり、資金の流れをより明確にするため、百花繚乱を始めてから2年後にNPO法人化した。「NPOは世間的な信頼感が高い。協賛をお願いするとしても、NPOの名前があるとないとでは全然違う」と小口さんは話す。
 活動を続けてきた中で、「被災地に1円でも多く送りたい」というイベントの趣旨を理解しているダンスチームが、一年間コツコツ貯めた募金箱を持ってきてくれたこともあったそうだ。「その気持ちが嬉しくて、胸がいっぱいになる」と小口さんは目に涙を浮かべる。「私たちが手弁当でやっているのを知って、差し入れを持ってきてくれる出演チームや、『良かったよ』と言ってくれる来場者の声もありがたい」と、百花繚乱を通して感じている喜びを語る小口さん。次の開催はいつなのか聞かれることも、年々増えてきたという。
 出演者にとっても、会場である新潟テルサのステージで、日頃練習しているダンスを披露できることが大きな魅力になっていて、募集を開始するとすぐに枠が埋まるほど、新潟のダンスイベントとして定着してきているそうだ。
ダンスとの出会いは「痩せるよ」のひとこと
 普段は介護福祉士として高齢者デイサービスに勤務しながら、サルサダンスのインストラクターの顔を持つ小口さん。意外にも子どもの頃は運動音痴だったそうだ。ダンスを始めたきっかけは、子育て中に通い始めたスポーツクラブで、会員仲間に誘われてサルサ教室に参加したことだった。「痩せるよ、のひとこと。それがなかったらやっていなかった」と笑う。
 最初はサルサ特有のリズムでステップを踏むことが難しく、自分にはできないと思っていたが、インストラクター養成講座があるから受講してみないかと指導者に声をかけられ、挑戦してみることに。努力して学び、インストラクターの資格を取ると、次は「このレッスンを閉めるんだけど、あなた引き継がない?」と先輩指導者から声がかかった。レッスンを引き継いだのが運のツキで、クラスを受け持つことになり、生徒との繋がりができると、辞めると言えなくなって、そのまま生徒が増えていった。
 子育てが一段落し、介護の仕事に復帰することになっても、レッスンを続けてほしいと生徒たちに懇願され、仕事の合間にダンスインストラクターを続け、現在に至る小口さん。「生徒さんたちの存在は本当にありがたい」と話す。
震災を風化させずに、百花繚乱で応援し続けたい
 新潟恩返しプロジェクトでは、百花繚乱の他に、復興支援のためのダンスサークルを月に一回開催し、小口さんが指導にあたる。ここで参加者から集めた会場協力金も義援金として送っている。
 まもなく東日本大震災から12年。「復興が終わるまでこの活動を続けたいが、まだまだと感じる。いまだに風評被害もあり、県外の避難先から帰れない人も多い。復興までの道のりは長い」と話す小口さん。「震災の記憶を、百花繚乱に参加した人が誰かに伝え、木の枝葉のように伝わる形で広めていきたい」と話す。
 今後の活動について伺うと、「コロナが落ち着いたら、被災地の視察ツアーをやりたい。小さいチーム単位では行っているが、実行委員全体で被災地を訪問していないから、募金を持って直接届けたい」と話す。さらに、「被災地のチームを新潟に呼びたいし、県外のチームにもぜひ見に来ていただきたい。百花繚乱をパッケージにして、他の県に持っていきたい。その県の皆さんが同じように被災地を応援してもらえたらいい。全国で応援できたらいいですよね、夢ですよね。」と目を輝かせて展望を語った。
 小口さんは「来年は今年よりも良くしよう」という気持ちで、日々次の百花繚乱に向けて準備に奔走している。進化を続ける百花繚乱のステージを観に、そして被災地を応援するために、会場へ足を運んでみてはいかがだろうか。
NPO法人新潟恩返しプロジェクト

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