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新潟からベトナムの子どもたちの未来を応援

2021.03.30
内容
多数の企業と協働し、ベトナムの子どもたちの支援を続けているNPO法人新潟国際ボランティアセンター。設立から30周年の節目を迎え、コロナ禍で国際交流が停滞する中でも、今できることに目を向けて前向きに活動されている三上杏里代表理事に話を伺った。
協働の形態
事業協力
協働の主体
NPO法人新潟国際ボランティアセンター、県内外の企業複数社
自治体
はじまりはラオス支援のチャリティーバザー
 新潟国際ボランティアセンター(以下、NVCという。)は、この地球上に作られた人と人との境界を越え、心に響き合う交流を通じて、幸せな未来に向かって助け合う育ち合うきずなを作るかけ橋となることを目指し、1990年に民間団体として発足した。発足のきっかけは日本国際ボランティアセンターのラオス支援を応援するために行ったチャリティーバザーだった。
 団体発足後は、ベトナムの子どもたちの支援を主な事業としている。支援先がベトナムだったのには理由がある。ひとつはベトナム戦争直後で、復興途中の過酷な環境下にあったこと。もうひとつは信頼できる現地人スタッフがいたことだった。そのスタッフは現在でも活躍中で、この現地スタッフと出会えたことが一番大きいと三上さんは語る。
企業との協働で大きく広がる支援の輪
 NVCでは4つの支援事業で企業と協働している。
1.ベトナム奨学金事業
社会主義国ベトナムでは、大学卒と非大学卒の給与は5倍くらいの格差がある。大学を卒業することが唯一の貧困から抜け出す道であるから、頑張って勉強して良い企業に就職し、家を助けたい、村を助けたい、という思いを持つ子どもが多い。大学の学費年間約4万円のうち、NVCは2万円を奨学金でサポートしている。年間12人の奨学生とサポーターは、1対1の顔の見える関係にあり、寄付したお金が誰に、どのように使われるかがわかりやすくて良いと好評で、多くの企業が奨学金サポーターとなっている。
もともと企業向けにサポーターを募集していたわけではないが、新潟からベトナム進出している企業が多いこともあり、ベトナムでビジネス展開をするからには社会貢献もしたいという企業理念に基づき、事業に賛同してくれる企業が増えている。
参加企業の例を挙げると、株式会社イソメディカルシステムズ(東京都)、株式会社TOWA JAPAN(新発田市)、株式会社阿部製作所(長岡市)、菱機工業株式会社(東京都)、グローカルマーケティング株式会社(長岡市)、株式会社渡辺製作所(加茂)、株式会社シーキューブ(新潟市)などがある。「企業さんが人を育てることに興味を持ってくださることがありがたい。」と三上さんは語る。

2.ベンチェ省 小学校支援事業
これまでにNVCは20校もの小学校建設を支援している。ベンチェ省はベトナムの中でも貧しい地域で、国からの支援も無いために小学校が建設できず、子どもたちは隣村の学校へ通っていた。そこで2014年、にいがた子育て応援団トキっ子くらぶと日本郵政グループ労働組合信越地方本部新潟連絡協議会が、「新潟の子どもたちだけでなく世界の子どもたちの支援もしたい」と支援に名乗りを上げて、50万円ずつ計100万円を出しあい、すでにある校舎を改築して小学校を建設した。それまでの雨が降るとうるさくて学習に支障のあった校舎は、子どもたちが安心して学べる快適な校舎となった。
アフターフォローとして、IT環境整備でも企業の協力を得て支援している。イソメディカルシステムズと株式会社阿部製作所は、小学校に中古パソコンを寄付し、ベトナムで使えるようにセットアップして、子どもたちがパソコンを学べる環境をつくった。パソコンを学べる学校が近隣ではここにしかなく、隣村の子どもや、ITを習得したい大人も集まって人気の場所になっている。

3.ロンアン省キムチシェルター フェアトレード事業
キムチシェルターには孤児だけでなく、親が貧しくて育てられず来た子どもも合わせて、男女200人が生活している。この施設の子ども達が自立して生きていくために助けてあげようという思いが、三上さんらに浮かび上がった。
18歳になると子どもたちは施設を出て社会で生きていかなければならない。特に女の子はその後自立できるかが心配になるが、ミシンの使い方を学んで縫製技術を習得したいという女の子たちの要望があり、技術指導のために、まずは1台目のミシンを現地購入して寄付した。
日本からも中古ミシンを寄付したいということで、ミシン探しが始まった。三上さんは、ミシンといえばニット、ニットといえば五泉、という発想で、五泉商工会議所に電話で問い合わせ、五泉商工会議所の協力により、芹沢ミシン商会に繋がった。芹沢社長の提案により、構造がシンプルで現地の修理業者でも直せる昔のミシンを10台探してきてくれた。日本の古いミシンは性能が良く、ジグザグ縫いのバリエーションも豊富だ。これに現地で購入したミシン11台と合わせて合計21台をシェルターに寄付した。縫製の技術指導も行い、地元小学校の体育着の注文を受けることができるようになるほど技術が向上した。さらに、日本で販売できるほどの製品が作れるようになりたいということで、デザインを三条のアパレル会社エイチストーリーに依頼して、型紙を提供してもらい、指導DVDと共に送った。三上さん自身も現地でミシン指導することもあったが、子どもたちは自分の生活がかかっているので真剣に聞いてくれたという。

4.チャリティーバザー
国内事業ではチャリティーバザーを開催している。団体発足のきっかけとなったチャリティーバザーは、多くの支援者に支えられながら現在も続いており、2020年11月には「第32回NVC愛のかけ橋バザー&フェスタ」を開催した。毎年楽しみにしている人も多く、年に一回みんなが集まることに意義があるとNVCは考えている。いまでは50を超える企業・団体や個人がチャリティー品の寄付に協力している。
いまできることから挑戦していく
 NVCでは2015年頃からグローバル人材育成事業として、単に語学が堪能であるとか、国際競争力に勝つ目的としてではなく、新潟に根差して、世界的視野で物事を考えて行動できる人を育てる目的で人材育成を始めた。インターンスタッフとして活動に参加してもらい、NPO、NGOの実務を学びながら大学の学問に活かしている。
 参加する学生の学部は多種多様で、自分が得意としている分野で活動している。新潟は若者が首都圏へ流出してしまっている傾向があるが、都会まで行かなくても地元新潟でもできることがあることを、学生たちにアピールしている。
 コロナ禍で、ベトナム支援に関しては停滞したままで進展が見込めない状況下にあるが、NVCとして今ここでできることを考えたところ、色々と見つけることができた。
 チャリティーイベントができないため、今までやろうと思って手を出せなかったインターネットショップを始め、キムチチェルターで作ったマスクや、孤児院の子どもたちが研磨した石のビーズのアクセサリーを販売している。また、スタッフの若い力を活用して、公式サイトやLINEアカウントの開設、ベトナム語のLINEスタンプも作成して販売している。このように、これまでのNVCの歴史になかった新しい挑戦が続いた。「できることからやっていこう!」と前向きに取り組んだ結果、新しいことができて良かったと三上さんは語る。自由に動けない今だからこそ思いつくアイデアが、今後のベトナム支援の方法をより良く変えていくに違いない。今後はインターネットを利用したオンライン交流や、企業や学生を巻き込んだ新しい取り組みへの挑戦など、ベトナムと新潟の関係がさらに深まるような交流と支援の可能性に期待が膨らむ。
新潟国際ボランティアセンターHP