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誇りある彌彦を子どもへ! 郷土愛と絆が生んだ酒「彌彦愛国」 (有)弥生商店 専務取締役 羽生雅克さん

誇りある彌彦を子どもへ! 郷土愛と絆が生んだ酒「彌彦愛国」 (有)弥生商店 専務取締役 羽生雅克さん 今回お話を伺ったのは、(有)弥生商店の専務取締役である羽生雅克さん。豊富な商品を取り扱う(有)弥生商店で特に目を引くのが、弥彦酒造が手掛ける「彌彦愛國」。(有)弥生商店、弥彦酒造、弥彦在住の書家、JAの4者で取り組んできた「彌彦愛國」プロジェクトで完成した酒であるが、その道のりは決して平坦なものではなかったという。本プロジェクトの広報担当でもある羽生さんから、地元の方とともにこだわり続けてきた「彌彦愛国」の誕生秘話と想いをお聞きした。

彌彦神社の門前に店を構える(有)弥生商店は、新潟の地酒・日本ワイン・本格焼酎の販売専門店である。店舗は築200年の古民家を移築・再生したもので、古民家のあたたかさを感じながら買い物ができることだけでなく、2階のテイスティングルームにはカウンターバーがあり、「1杯とちゃんと向き合ってほしい」という羽生さんの想いが伝わる造りとなっている。数ある商品の中でも特に目を引くのが、弥彦酒造が手掛ける「彌彦愛國」。その名前に「彌彦」がついていることや手書きのラベルからも商品への愛情がうかがえる。

羽生さんは醸造を学ぶため東京に進学し、卒業後は山梨県のワイナリーで働いていたが、今から16年前に弥彦へ戻り、(有)弥生商店の3代目となった。昨年までは、彌彦神社氏子青年会会長も務め、弥彦燈籠祭りで行われる燈籠押しを子どもたちに披露したり、一緒に燈籠を作ったりして、弥彦を愛する気持ちや伝統を伝えてきた。

そんな羽生さんのもとには、弥彦に戻って以降、「弥彦産の酒が飲みたい」という声が寄せられるようになっていた。そこで、羽生さんは村唯一の蔵元である弥彦酒造の大井源一郎さんのところに相談を持ち込んだ。さらに弥彦在住の書家、田中藍堂さんが加わって話し合いを重ね、「弥彦の代名詞になるようなお酒をつくろう、子どもたちの代までつながる酒にするために、米も水もラベルもすべて弥彦産にこだわろう」という三者の想いが合致したことが「彌彦愛國」誕生のきっかけとなる。

誕生までには三つのこだわりがあった。

最初のこだわりは米探し。他にはない酒をつくるため、古代米「愛國」に出会うまで1年半という時間を要した。地元JAの協力を得て新潟県作物研究センターに保存されていた種もみを分けてもらうことに成功したが、量はわずか10グラム。古代米である「愛國」を現代に蘇らせることは手間のかかる作業であったが、自ら手を上げ協力してくれる農家の方がいたおかげもあって、減農薬・無化学肥料の栽培に成功することができた。また2年目からは米の収穫体験イベントを開催し、村人や子どもたち、活動に共鳴した村外の方から参加があり、地元に根差した酒造りの情熱を一緒に感じている。

続いてのこだわりは酵母。すべて弥彦産、を実現させるため、弥彦山山頂に咲くヤヒコザクラに目を付けた。ヤヒコザクラは弥彦山9合目にある樹齢170年余りの大樹で、天然記念物ともなっている。風雨で剥がれ落ちた樹皮や花弁を集めて羽生さんの母校に清酒酵母分離を依頼した結果、200株以上の天然酵母から奇跡的に8株の清酒酵母を発見することができ、そのうちの1つ「東京農大弥彦桜5号」を用いることにした。

最後のこだわりはラベルづくり。使用するのは、弥彦村にある障害者福祉施設「やひこ学園」の生徒たちによる手漉きの和紙である。「愛國」が育つ「田」を、稲穂をイメージさせる金色で描き、その中に商品名「彌彦愛國」の4文字を弥彦村在住の書家、田中藍堂さんが一枚一枚手描きで記している。

この長い道のりを経て完成に至った「彌彦愛國」。弥彦が好きということがすべての原点だったと語る羽生さんからは、生まれ育った地域への愛情と、酒造りへの情熱が感じられた。
今では、農家の方から「あの酒の米はオレが作っているんだ!」と喜ぶ声も聞かれるようになったという。最近では、「彌彦愛國」の超長期熟成保管コストや酒米収穫体験イベント費用を賄うためクラウドファンディングを行い、目標額を大幅に上回る結果となったことからも、羽生さんたちの活動は着実に浸透していると言えるだろう。

今後の課題について聞いたところ、「離農が進み水田が減っていくこと、ふるさとの景色が変わっていくことは大変残念。酒造りが伝統をつなぐ一助になればと願うし、次世代が受け継いでくれるような酒造りをしたい。」という。また、これからの展望については「作って終わりではない、知ってもらうことが大事。子どもの頃は酒米の収穫を体験してもらい、大人になったらその米でできたお酒を飲んでもらうという体験を通して地元に愛着を持ち、そして地元を誇りに思ってほしい。また、旅館や飲食店とも連携して、村外の方にも知られるお酒になってほしい。」と力強く語った。

「彌彦愛國」の誕生ストーリーを知った今、その印象はより深いものになるだろう。ぜひ、現地に足を運んで、彌彦の恵みを感じながら、「彌彦愛國」を味わってみてほしい。

(有)弥生商店
http://www.yayoi.sake-ten.jp/

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