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『まちが真っ赤に染まる、その日まで。鯛車から生まれるコミュニティ。』 鯛車復活プロジェクト 野口 基幸 さん

『まちが真っ赤に染まる、その日まで。鯛車から生まれるコミュニティ。』 鯛車復活プロジェクト 野口 基幸 さん 「本当は東京に出たかったんですよ。巻のことが好きではなかったので。でも、鯛車と出会うことで、このまちの良さに気づきました。」と口からこぼれる。今回は新潟市巻地区の鯛車復活プロジェクト代表を務める野口基幸さんにお話を伺った。

鯛車をご存じだろうか。張り子または木製の鯛に車をつけて引き回す郷土玩具で、巻地区だけでなく、三条市でも作られていたという。かつては、お盆の夕暮れ時になると、浴衣姿の子どもたちが鯛車にあかりを灯して、町内を引いて回ったそうだ。だが、鯛車を作る職人がいなくなったことや、ライフスタイルの変化に伴って、そうした習慣は失われてしまった。

野口さんが鯛車と出会ったのは子供の頃。物心ついたときに鯛車を引いていた思い出があったそうだ。ただ、大学の卒業研究で取り上げるまで、特別な思いを持ち続けていたわけではなかったという。

卒業研究で何を題材にしようか考えていた時に、ゼミの先生から地元のものを活かすことを提案され、ふと、子どもの頃に触れた鯛車を思い出したことが、鯛車復活プロジェクトが始まるきっかけとなった。

「元々はポスターを制作するだけの予定だったのですが、”鯛車復活”というメッセージを入れたところ、後に引けなくなってしまいました。また20台を引いたパレードをしたところ、”かわいい”、”なつかしい”という声を受けて、続けてみようと思いました。」

「鯛車が廃れてしまった原因の一つには、作り手がいないことがあります。趣味で鯛車を作っている人は何人かいますが、作れる人がもっと増えれば残り続けるだろうと考え、鯛車を作る教室を開くことにしました。いまでは、そこで作った人たちが先生役にもなってくれています。」

こうして、大学卒業後は東京で就職しようと思っていた野口さんだが、鯛車と出会ったことで、地元である巻町(当時、合併前)の良さに気づき、地元に就職することにしたという。当初は、母校の長岡造形大学で研究員として働いていたが、いまは活動に理解のある民間企業で務めている。

鯛車復活プロジェクトが正式にスタートしたのは、大学を卒業した翌年、2005年5月。巻町の役場に勤めていた土田真清さんの協力によって始まった。最初に行ったのは鯛車教室だった。この1期生がいまでも関わってくれるプロジェクトのメンバーでもある。

「第1回の時は、教えられる人が僕しかいなくて本当に大変でした。1人で20人の相手をして。なので、みんな手探りで作っていく感じになって、でも、逆にそれが良かったのかなと思います。」

鯛車教室はその後、巻地区だけでなく、様々な人の縁によって東京にある新潟県のアンテナショップ「表参道・新潟館ネスパス」でも開催されることになった。また、そこに偶然参加していた方に誘われて、長野市でも開催し、善行寺の表参道で鯛車を練り歩く催しにもつながった。

復活プロジェクトの活躍にも後押しされ、地元の商店街では「まき鯛車商店街」と改称、シンボル・キャラクターとして鯛車を起用するだけでなく、鯛車をイメージした商品開発を行うなど、地域活性化にも貢献するようになる。
こうした着実な取り組みが評価され、2011年には「第4回ティファニー財団賞」の「 伝統文化振興賞」の受賞に至った。

鯛車の活動を始めることでどんな変化が生まれたか、そう尋ねると、「自然とコミュニティが生まれました。教室に参加してくださった方の中には、お茶のみ仲間ができた方もいらっしゃいます。」と野口さんは語る。

鯛車を作るという共通体験をしたことで、自然と仲間意識が芽生え、お互いに支え合おうという気持ちが生まれてくる。だからなのだろう、教室のお手伝いには、巻地区の方だけでなく、秋葉区など遠方から来てくださる方もいるという。

今後の展望を聞くと、「続けていくことが大事だと思っています。昔のようにお盆のころに、子どもたちが鯛車を引いて、まちが真っ赤に染まる情景の復活を目指しています。これまでの約10年間で1000台の鯛車をつくることができました。1家に1台の鯛車を目指すには、巻地区には6000世帯が住んでいるので、あと50年かかります(笑)」と野口さんは笑う。

お盆のころには「鯛の盆」という、鯛車を貸し出して、お墓参りをしてもらう取り組みも行い、定着してきたという。

鯛車教室は夏と秋の年2回、開催しているそうだ。自分の手でつくっていく体験とともに、鯛車のコミュニティの一員となって、この町の持つ歴史や文化を感じに行ってみてはいかがだろう。


・鯛車復活プロジェクト 〜まちが真っ赤に染まる情景の復活を目指して〜
  http://www.taiguruma.com/

(2017/07/28 にいがたNPO情報ネット http://www.nponiigata.jp

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